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「助けに来てくれた彼を置いて、自分だけ逃げる気なんだ?」
「っ…!!」
笑顔で、グサリと刺さる言葉の刄を振り下ろす尚久さんに、撫子さんは、泣きそうに顔を歪ませる。
「本当に君は、オレを苛つかせるのが、上手い。」
尚久さんはポケットを探り、何かを取り出す。
手の平におさまるソレは携帯用ナイフで、尚久さんは指先で跳ね上げカチリ、と刃を取り出した。
ビッ、
「っ!!」
渇いた音とともに、撫子さんの服のボタンが弾けとぶ。
胸元を晒されてしまった彼女は、声無き悲鳴をあげた。
「尚久さんっ!!」
オレは痛む腹を庇いながら、無理矢理立ち上がった。
そんなオレを見て、尚久さんは益々不快そうに眉をひそめる。
「…本当、斎藤君は綺麗だね。上っ面だけじゃないから、余計に苛つく。……君を見捨てて逃げようとした女を、これ以上庇うのはやめておきな。」
「オレが、逃げろって合図したんです!…尚久さんこそ、止めてください。こんな事したって、誰も得なんかしないっ…!」
場違いにも諫めるように言われて、オレは愕然とした。
まるで、見なかった事にするのが、正しいんだ、と言わんばかりの彼に。
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