Main 覚悟 「……………、」 尚久さんは、屋敷内を、奥へ奥へと進んで行く。 ついていきながら、オレはふと気付く。 彼の足取りに、全く迷いが無い事を。 止まる素振りも、無い事を。 普通誰かを探す時は、通過する際、辺りを確認したり、声を掛けながら進むものじゃないだろうか。 でなければ、見過ごしたり行き違ってしまう恐れがある。 ましてや、倒れている可能性があるなら、尚更。 部屋を一つ一つ確認する必要だってある筈。 なのに彼は、ただ真っ直ぐに進んで行く。 まるで――― 居場所を知っているかのように。 「………………!」 今迄、迷い無く進んでいた尚久さんは、ある一室の前で、ピタリと足を止めた。 「………………。」 「…っ、」 そして彼は、キョロ、と辺りを伺うように首をめぐらせた。 見つからないように、慌てて身を潜める。 壁際に張り付くように隠れ、そっと窺うと尚久さんは、その扉に手を掛けるところだった。 . [*前へ][次へ#] [戻る] |