Main 2 大して進まないうちに、尚久さんを見つけた。 物陰に隠れながら、そっと覗き見る。 スッと背筋の伸びた、姿勢の良い姿は、何故かしずかちゃんを思い出した。 「………………。」 ゆっくりと息を吸う。 静めようとしても、早鐘を打つ鼓動は、逆にスピードを増していく。 バクバクと響く音が耳障りで、他の音が聞こえ辛い。 「……………っ、」 だってもし、違ったら。 冤罪…濡れ衣だったら、 オレだけの問題じゃなくなってしまう。 ただでさえ、桜子さんらのお母さんと険悪なムードになってしまっているのに、ここで志藤家長男にあらぬ疑いをかけた事が知れれば、 それはそのまま、『紗鞠』の信用問題になってしまう。 名乗った瞬間からオレは、『紗鞠』の看板を背負う一人になってしまっているんだから。 迂濶な行動は、あの子との溝を深めるだけ。 「………………。」 でも、 見てみぬふりは出来ない。 もしそんな事したらオレはもう、 貴方の前には、立てなくなる。 そうでしょ? ――黒さん。 . [*前へ][次へ#] [戻る] |