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「…どう動くのか見定めてからでないと、下手に動くのは危険だな。」


解散し、退室していく人達の最後尾で、日下部先輩は、周りに聞こえないような小さな声で呟いた。


「…………。」


オレは神妙な面持ちで、頷く。


しずかちゃんが当主になるか否かは、彼自身にしか決められないけれど、その決定によっては、彼の身は危険に曝される可能性がある。



オレが、無意識に掌を握り締めた、その時、


ふいに、オレの肩に手が置かれた。



「…君が、斉藤君?」

「っ?」


突然声をかけられ、オレはビクリと体を揺らした。


振り返った先、そこに立っていたのは、


三十代半ばと思われる年齢の、美女。


少し吊り上がり気味の黒目がちな瞳に、チョコレート色の髪は、緩く巻かれており、薄く化粧した美貌と相まって、可愛らしくも色っぽくも見える、絶妙なセンスだ。


見覚えが全く無いのに、何故か既視感を覚えるその女性は、オレをじっと見定めるように見つめた後、


社交辞令的な笑みを浮かべ、オレに向かって手を差し出した。



「私は家元の妹の、北條 麻美です。」


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あきゅろす。
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