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正気っすか。


オレを後ろから抱き抱えるように、ガッチリとホールドしている日下部先輩は、低い声で威嚇するように告げる。


「気安く触れるな。」


ちょ…、


「女の子になんて事言うんですか!!」


オレは見上げる形で、ギッと日下部先輩を睨み付ける。

しかし日下部先輩は、全くこたえた様子も無く、袖口でオレの頬を拭ってしまった。


「何すっ……桜子さんからのチューがっ…!!」


こんな平凡地味男が、あんなに可愛い子にキスを貰えるなんて滅多にない事なのに!!
寧ろ、もう二度とないかもしれない宝物なのにー!!


イケメンには、事の重大さは分からないかもしれんけどな!!


「…キスが欲しいなら、いくらでもやるさ。」


苛ついたような擦れた低い声で、そう言うなり、日下部先輩はオレに顔を近付けてきた。


いやいやいや。


いくらアップに耐え得る綺麗な顔でも、男同士ですから。オレら。


「何血迷ってるんですか!!」


ガッシと日下部先輩の顔を、遠慮無く掴んで止める。


「…へぇ〜。成る程。」


阿呆みたいな攻防戦を繰り広げるオレらを傍観しながら、桜子さんは感心したように頷いた。


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