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「元々、うちの父は、志藤本家との確たる繋がりが欲しかっただけだし。私と静の婚約破棄は、案外スンナリいきそうよ。…撫子と尚久さんの方は難しいでしょうけど。」
「…次期当主の義父の座が手に入れば、どちらでも構わん、という訳か。」
日下部先輩の言葉に、桜子さんは淡々と答える。
「…そうね。だから本当は、静が家を継げば、二人はうまくいくと」
「桜子さん。」
オレは、思わず桜子さんの言葉を遮った。
じっと、彼女の瞳を真っ直ぐに見ると、桜子さんは、僅かに目を瞠った後、バツが悪そうに視線を彷徨わせた。
「…もしかして、分かっちゃってたり、するんだ。」
あは、鋭いなぁ。
なんて、困った顔で、泣きそうな顔で笑う彼女を見て、本当に自分が嫌になる。
「…大丈夫だよ。元々分かってた事だし。」
…それでも、
傷つかない訳、無い。
「双子なのに、中身全然違うからさ…あはは。やっぱり、男の子は撫子みたいな可愛くてか弱い娘が好きなんだね。」
冗談まじりに笑いながら言う、桜子さん。
でも、笑みをおさめた彼女は、ポツリと聞こえないような小さな声で、
羨ましいな、
と呟いた。
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