Main 3 「…でも、先に結婚した方を当主にするって言ってましたよね。」 オレらの去り際に投げ寄越された言葉。 しずかちゃんは激昂していたが、第三者的には、お父さんも必死なんだなって、伝わってきた。 「…そうだな。とっとと兄の方が結婚してくれれば、丸く治まるんだが。」 日下部先輩が、ため息まじりに呟いた言葉に、オレは眉をひそめる。 「…それがですね、」 「…何だ?」 言いにくくて、躊躇ったオレの様子に、日下部先輩は姿勢を正し、眼鏡を指でカチャリと押し上げた。 「…オレの勝手な推測なんですが、…しずかちゃんは撫子さんが好きなんじゃないかと。」 「………何だって?」 日下部先輩は、一拍置いて、眉間にクッキリしわを刻んだ。 「でもって、尚久さんと撫子さんは、うまくいって無いっぽいです。」 「……………。」 日下部先輩は、頭痛を感じたように目頭を指で押さえた。 . [*前へ][次へ#] [戻る] |