[携帯モード] [URL送信]

Main
2
※暁良視点です。


「『黒い龍を、引き裂いて野良犬の餌にしてやろうか?…影』」


雑魚どもに言わせていた言葉を、そのまま繰り返す。

「―――。」

一瞬で、ブワリと、怒気が膨れ上がった。


キィンと張り詰めた空気。


「――黒さんは」


その怒気にそぐわない、静かで平坦な声。


張るわけでも無いのに、その声は不思議と良くとおった。


「黒さんは、お前にやられたりなんか、しない。」



そこには、確固たる信頼があった。



「気高き黒龍は、地獄の番犬ごときに墜とされたりしない―――。」


ガシャ。


言い終えると同時に、小柄な影は、フェンスに手を掛け飛び越える。



「―――自殺でもする気か?」


興醒めな思いで、低く問う。


細い背中は、怯える様子もなく、強い風に、黒髪をなびかせている。


「………。」


躊躇なく、ヒラリと虚空に体を躍らせた。

「!?」


「………。」


ゆっくりフェンスに近付く。


「………は。」


思わず、笑い声が漏れた。


眼下に見えるのは、愚か者の死体などではない。



奴が飛び降りたのは、下の階の、連絡通路の屋根。
そこから雨樋に手を伸ばし、器用にスルスルと降りた奴は、こちらを振り返りもせず、駆けていく。



流石。逃げ足では、奴に誰も適わない。


正体は不明。
《陰/陽》の極一部の幹部以外、顔も知られていない『黒龍の影《陰》』。

戦闘に関わる事は無く、黒龍の傍に、極稀に現れる。
警察から、敵チームから、《陰/陽》を逃がす導き手。


「……やっと見つけたぜ。オレの玩具。」


極上の愛を囁くように唄う。


どうやって、捕まえようか。


どうやって、遊ぶか。









―――どうやって、壊そうか。


.

[*前へ][次へ#]

40/79ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!