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咄嗟に、廊下の隅に置いてあったゴミ箱を階下へ投げ転がす。

ガラッ

扉が開き、人影が出てきた。
オレは上へ昇る階段の途中に、身をひそめた。


「…下へ行ったっぽいねー。オレが追い掛けるね?ソウチョ。」


咄嗟に転がしたゴミ箱の転がる音につられてくれた爽やか系イケメンは、楽しそうに階下へ降りて行く。



…よかった、今のうちに。




「……お前か?」

「!?」


低い美声が、見えない位置にいるオレに、真っ直ぐに寄越される。



「…小賢しい手だか、咄嗟に使えるその度胸。…………お前なのか?」



コツ。


踏み出された音に、オレは振り返る事無く、全力で駆け出した。




「…鬼ごっこか?」


階下の声が、愉快そうに響く。
狩りを楽しむ獣のように、妖艶な笑みが、見ずとも頭の中に浮かぶ。

あの男に、一番似合うあの顔が。



ドックンドックン


耳鳴りと心臓の音が、大きくなる。


全力疾走のオレに対して、アイツは余裕に追い掛けてくる。

けれど野生の猛禽のような、無駄のない動きは、着実にオレとの距離を縮めてきた。




バンッ!!




オレは、屋上の扉を開けた。


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