[携帯モード] [URL送信]

Main
獅子


少し離れた所で待っていたセンセの元に、小走りで近付くと、センセは歩き始めた。


大きな背中を見ながら、オレはセンセの後を無言でついていく。


何も語らない背中が、返って雄弁に怒りを伝えてくるようで、オレは僅かに俯いた。


やがて数学準備室につき、中へ入るセンセの後ろについていく形で一緒に入る。


グイッ
「っ!?」


敷居を跨いだと同時に、腕を強い力で引かれた。


ダンッ


出入口のすぐ横の壁に、押さえつけられ、オレは一瞬、息を詰まらせる。


「……っ、」


驚愕に、声も出せない。


目を見開くオレのすぐ近く。
唇が触れてしまいそうな至近距離に、怖いくらい真剣な、センセの綺麗な顔があった。


絶対零度の、凍てつく美貌。


彼は無表情のまま、烈火の如く怒っていた。


「……………。」


息をごくりと飲み込む。


蛇に睨まれた蛙…いや、肉食獣に睨まれた小動物のように、オレは身動き一つ出来ないまま固まった。


.

[*前へ][次へ#]

30/118ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!