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獅子
少し離れた所で待っていたセンセの元に、小走りで近付くと、センセは歩き始めた。
大きな背中を見ながら、オレはセンセの後を無言でついていく。
何も語らない背中が、返って雄弁に怒りを伝えてくるようで、オレは僅かに俯いた。
やがて数学準備室につき、中へ入るセンセの後ろについていく形で一緒に入る。
グイッ
「っ!?」
敷居を跨いだと同時に、腕を強い力で引かれた。
ダンッ
出入口のすぐ横の壁に、押さえつけられ、オレは一瞬、息を詰まらせる。
「……っ、」
驚愕に、声も出せない。
目を見開くオレのすぐ近く。
唇が触れてしまいそうな至近距離に、怖いくらい真剣な、センセの綺麗な顔があった。
絶対零度の、凍てつく美貌。
彼は無表情のまま、烈火の如く怒っていた。
「……………。」
息をごくりと飲み込む。
蛇に睨まれた蛙…いや、肉食獣に睨まれた小動物のように、オレは身動き一つ出来ないまま固まった。
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