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※日下部視点です。
「明日明後日に…という程ではないようですが、周辺が大分騒がしくなってきた模様です。」
男は、ひじ掛けに頬杖をつき、皮肉げに口角をあげた。
「くたばる前から、死んだ後の算段とはな。…さしずめ、一番躍起になっているのは、奥方様か?」
私が無言で頷くと、男は嘆息する。
「跡取りは、ご自慢の愛息にほぼ決定だと聞いていたが…。随分目の敵にされてんな。」
面倒臭ぇ、と男は、もう一度、長く息を吐き出した。
「日下部。」
「は。」
「目を配っておけ。」
「…了解致しました。」
端的に呟いた男に、私も簡潔に返した。
男は、手元の書類から目を離し、窓の外へ視線を向ける。
暗闇の中、遠くの空に、時折光が走った。
月や星を覆い隠す暗雲。
やがて此処にも、雨を呼ぶだろう。
「…荒れるな。」
ポツリと呟いた男の声が、部屋の中に落ちた。
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