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声が出ない。


覚悟も無いまま、突然、選択を迫られ、オレは携帯を取り落とさないようにするのが精一杯だった。


手が、意識しないまま、震えていた。


『…誰だ。』


苛ついたような声音で、再度繰り返される、問い。


呼吸する事すら、上手く出来ない。
全力疾走したかのように、ドクドク煩い鼓動を静めるように、大きく息を吸い、頭を懸命に働かせた。



さっきの未来君の言葉と、争うような物音。


そして、今、電話口にいる、陽。


総合すれば、自ずと導きだされるのは、



―――最悪の事態。



「………、」


上手く声が出ない。

ああ、でも、
言わなくちゃ。
聞かなくちゃ。



未来君は、無事?
青さんは、どうしてるの?


『………。』


オレがテンパっている間にも、タイムリミットは近付く。


苛立った陽は、今にも電話を切りそうだ。





怖いし苦しいし痛いけど、


覚悟を決めなきゃ。




大切な人を巻き込んで、傷つけるのは、


きっと、
もっと怖くて苦しくて、痛いから。






それに、何より





オレは、




お前をそこまで追い詰めた責任を、
とらなきゃならない。





そうだろ?












「………陽。」
『っ!?』



息をのむ音が、
やけに大きく、聞こえた。


.

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