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7
まず目についたのは、やけに大きな、―――毒々しいまでに紅い、月。
そして、その月光を浴びるように、空を仰ぐ少年の姿。
はじめオレは、少年の綺麗な顔や、手を染める紅が、何か分からなかった。
少年の長い指を伝い滴り落ちる紅。
その赤黒い雫が、血、だと認識するまでに、大分時間をようした。
…それ程、現実感の無い光景だった。
辺りを埋め尽くす、怪我人の群れ。
機械油と潮のにおいに交ざる、鉄さび独特の臭い。
呻き声。
点々と散る、紅。
その中央で、血と月光を浴び、うっとりと哂う、少年。
「っ…!」
その凄艶な光景に、オレは寒気を覚えた。
…常軌を逸している。
行動もそうだが、
何よりその瞳、が。
愉悦に満ちた恍惚とした瞳が、
怖い、
そう思った。
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