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記憶の欠片
「……陽?」
言われた名前を、繰り返すオレに、目の前の麗人は、綺麗な菫色の瞳を細めて、頬笑んだ。
彼が、オレを覗き込むように首を傾けると、肩口から、上質の絹糸みたいな銀色の長い髪が、サラリとこぼれる。
後ろで一つに括っているが、サラサラすぎて、一房二房と逃げてしまうらしい。
「そうだ。…《陰/陽》の名の通り、陰の対になる。少し…いや、大分難しい子だが、仲良くしてやってくれると嬉しい。」
そう言って、白皙の美貌の主…白さんは、心配性のお父さん(いや、お母さん?)みたいに苦笑した。
まだ、会ってからそんなにたっていないので当然なのかもだが、白さんのこんな顔は、初めて見た。
元々身内には甘い傾向はあるが、キチンと線引き出来る人なので、ソレが発揮されるのは、本当に必要な時だけなのだが。
こんな風に、個人を心配し、口添えしてくるような事は、珍しい。
「…はい。」
返事をすると、白さんは、ほっとしたように表情を和らげた。
その顔を見て、思う。
ああ、『陽』という人は、白さんにとって、大切な人なんだなぁ、と。
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