Main 3 それが変わったのは、いつの頃だっただろう? 見えてないんじゃないかと、いっそ清々しい位に、前を素通りしていた男が、いつの間にか、オレの前で立ち止まり、オレを見て笑うようになった。 陰、と嬉しそうな声でオレを呼び、ペタリと傍に張り付くようになった。 「…何かのきっかけがあって、変わったんだと思うんだけど……思い出せないんだよなぁ……。」 考え込むオレに、西崎は短く嘆息する。 「……まぁ、いい。それよりも、これからの事だ。」 仕切りなおすように言うと、西崎は、まだ考え込んでいた武藤の頭を軽くはたいた。 「いい加減戻ってこい。」 「………。」 憮然とした顔で、武藤は西崎を睨んだ。 「…考え込むのは結構だが、キレて突っ走るのは勘弁してくれ。」 冷ややかな目で、そう呟く西崎に、武藤は舌打ちした。 「…んなワケねぇだろ。」 ―――、アレ? 何か今、頭の隅を掠めたような…。 『…そんなわけ、ないだろ。』 ああ、いつだかオレが言った言葉。 …何のタイミングで言ったんだっけ? ………? 記憶を手繰るうちに、オレは自然と昔を思い出していた。 さして遠くない、過去の断片を。 . [*前へ][次へ#] [戻る] |