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亀裂
オレは、武藤と並んで廊下を歩いていた。
そして、階段を通り過ぎようとした時、見知った小柄な姿を視界の端にとらえ、足を止める。
「あ。」
「?」
止まったオレに、武藤は疑問顔を向ける。
「未来くーん。」
階段を昇る少年に向かって呼び掛けると、少年はビク、と体を揺らした。
けれど何もなかったかのように、振り返る事なく、行ってしまう。
…?聞こえなかったかな?
「ごめん、武藤。先行ってて。」
武藤にそう言って、オレは未来君を追った。
パタパタと早足で追い掛ける。
「未来君!」
大きめの声で呼んでも、未来君は止まってくれない。
その事に疑問と不安を抱きつつ、オレは未来君を追い掛けた。
「未来君!」
ガシッ、と未来君の肩を掴む。
漸く、未来君は足を止めてくれた…でも振り返ってはくれない。
「…未来君?」
シン、とした空間に、オレの声だけが響く。
遠くに喧騒を聞きながら、オレは未来君を覗き込もうとした。
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