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「久しぶりだな。…元気にしていたか?」
ほんの少しだけ口角を上げて、玄武さんは微笑った。
オレもヘラリと、笑み返す。
「はい。元気です。」
玄武さんは、そうか、と短く呟き、瞳を弓形に細め、笑みを深くする。
しかし、直ぐに笑みを引っ込め、気遣わしげに表情を曇らせてしまった。
「…怪我の具合は、どうなんだ?」
青さんは、敢えて問わなかった事を、玄武さんは正面から聞いてきた。
…直球だなって、オレは苦笑する。
でも、ちゃんと分かってる。
この人が、真っ直ぐ聞いてきたのも。
青さんが、聞かなかったのも、同じ優しさ。
行動は逆でも、オレを心配してくれる気持ちは、たぶん一緒。
「もう大丈夫です。…ちょっと跡が残っちゃうのもありますが、服で隠れるとこだから、影響ないですし。」
オレは笑うが、玄武さんは笑わなかった。
眉間にシワを寄せ、そぅっとオレの頬に、手で触れる。
「傷をつけられてばかりだな…。」
痛ましい表情で、そう呟く玄武さんに、オレは、かぶりを振る。
「お互い様なんです。」
オレもアイツに傷をつけた。
オレの体の傷みたいには、簡単に消えない、心の傷を。
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