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待て
「落ち着いて!ね?しずかちゃん。」
オレはしずかちゃんの腕に、しがみつき、長身の彼を必死に見上げる。
キレてたしずかちゃんに、オレの言葉は一応届いたようで、何とかしずかちゃんは止まった。
冷たい、と感じるような無表情だった彼は、戸惑った顔で、それでもオレと瞳を合わせてくれた。
「りっちゃん…。」
しずかちゃんの腕を掴んだオレの手に、彼は逆の手をそっと重ねる。
哀しいような、悔しいような、その顔に。
オレは漸く安堵した。
…だって、『待て』をくらったワンコみたいなんだもん。
何で?何でダメなの?
そんな顔。
だからオレは、笑い掛け、背伸びをしながら、彼の髪をそっと撫でた。
サラリ、とハニーブラウンの髪に、指を通す。
「大丈夫だよ、しずかちゃん。オレ、どこも何とも無い。」
痛くないし、苦しくもない。
だからね。
そんな事、しなくていいんだよ?
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