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※墨田視点です。


志藤の顔から、完全に笑顔が消えた。


―――無表情になっただけ。


だが、その変化は苛烈だった。


空気が張り詰める。
まるで、極限まで引かれた糸のように、触れれば切れる危うさだ。


「…オレはさっきまで、お前に興味なんてなかった。」


静かな声は、まるで別人のように、低い。
感情の全てを削ぎ落としたかのような声音は、冴え凍る氷柱の如く冷たく、鋭く。


「でも今は違う。…なぁ、墨田―――遊ぼうぜ。」


ニィ、と唇を歪め、志藤は残忍な笑みを浮かべた。





「…全力で潰してやるよ。」


滅多に本気にならない獣は、その鋭い牙を剥き、咆哮をあげる。


純粋な殺気が、真っ直ぐに俺へぶつけられた。


事態の異常さに、俺はついていけない。


この光景を例えるならば、

追い詰める筈の獲物を、大事に護る、獰猛な獣。



ユラリ、と体を傾け、志藤はまるで踊るように、間合いを詰める。

「っ!」

一触即発で、争いが始まろうとした、その瞬間。


巻き込まれ、戸惑っていた黒猫が飛び出してきた。


「待った!!」


ガシッとぶら下がるように、志藤の腕を掴む。


全力の制止が功を奏したのか、僅かに志藤の瞳に理性が戻った。




―――改めて、問たい。


何がどうなっているんだ?


説明してくれ、陰。


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