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「……本当に、ケガとか無い?」
オレが呆然としている間にも、会話は進み、志藤が念を押すのに、少年は笑って答えた。
「うん。しずかちゃん、ちゃんとキャッチしてくれたじゃん。」
…もう、思考が追い付かない。
少年の口振りは、明らかに初対面のものでは無い。
どころか、相当親しい間柄な事が窺える。
明るく人懐こい彼だが、礼儀をキチンとわきまえており、目上の人間と話す時は、大抵敬語だ。
しかも、あだ名で呼ぶことはあっても、殆ど『さん』付け。
あんな風にタメ口で、あだ名呼びなんて、まずあり得ない。
…強要されないかぎりは。
何があった?
ソイツは間違いなく敵だぞ?
―――陰。
じっと見つめる俺の視線に気付き、少年…陰は、顔を上げた。
一拍おいて、瞳が見開かれる。
…しかし、直ぐにその姿は隠されてしまった。
ザッ
オレの視界から陰を隠すように、志藤が割り込む。
「……何してくれちゃってんの?墨田。」
冷えきった声が、その場に響いた。
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