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>>03 高1の冬


祥と話さなくなって早半年。俺は高2になっていた。


幸いにも祥とは別のクラス。


「光ぅー、腹減ったぁ!」
「俺のカップ麺食う?なんか朝食い過ぎて腹減ってなくてさ」
「まじか!やーん光くん好きぃ!」
「あっは、俺もだっつの」

授業の合間の十分間、二年になって仲良くなった浅川と会話を交わしながら廊下を歩いていれば不意にぎゅうっと抱き締められる。浅川は祥とは正反対。身長は俺より高いけど、金髪も香水の匂いも、話し方も考え方も、祥を思い出してしまうことが無いから、だから一緒にいる。

「つうか、光ー、お前また痩せたぁ?」
「え?そんなことないと思うけど」
「いーや、痩せたね、抱きつけば分かるよ、…なんか骨が当たる」
「ぶは、ちゃんと食ってるっつの」

なんて嘘ついちゃったりして。おにぎりもパンも購買も嫌い。全部祥に結び付いちゃうから。だから最近はずっとカップ麺。学校には魔法瓶持参、俺頭良い。

なんて一人で悲しく自画自賛をしていれば俺を抱き締めていた浅川がようやく体を離してパーマのかかった金髪を弄る。無駄に整った顔の浅川の目線は俺の先に向かっていて、つられて俺も振り返れば、避け続けていたキャラメル色の髪の、元親友。

「なー。女といるアイツ、んーと一ノ瀬祥って、お前と同中なんだっけ?」
「………」
「光ー?」
「…え、あ、うん。喋ったりとかはしないけどね」
「ふぅん。そうなんだ」


一ノ瀬、祥。
名前を聞いただけで心が震える。胸が痛い。死にそうなくらい痛い。死んだこと無いからわかんないけど。

廊下をこちらに向かって歩いてくる祥と、目が合った。

心臓が跳ね上がる。

仲睦まじく絡まった手。
寄り添う女。


嗚呼、わらえてくる。




俺は男なのに、

祥を好きだなんて。


滑稽で見苦しくて、間違っていて、汚い。不純、きもちわるい。


「光ー?どうかした?」
「……あは、浅川ごめん。ちょっと具合悪いから帰るわ」
「えっ、ちょ、光!?」



辛いなぁ。


きえちゃいたい。



(逃げ出した俺は走り出す。逆走。シャットアウト。さよなら。)



その次の日、俺は高校をやめた。






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