[携帯モード] [URL送信]

小説
ジャローダ♂とゼクロム
ドタドタと大きな音を立ててやってきている者に心当たりがある。
普段はまとも。しゃべればアホ。行動させると変態こと、私にゲットもしていないのに付きまとう、

「名無し!結婚しよう!!!」
「帰れ馬鹿ドラゴン」

どこで覚えて来たのか花束(野草)を持ってきたゼクロム。この世の女が野草で靡くか。
笑顔で持ってきたそれを、ほぼ無言で投げ捨てたジャローダ。さすが私のパートナー。
安心安全のセコムだ。
不満げにジャローダを睨んでいるゼクロム。
どうして私のポケモン達はいないのか。
うっかり私が、仕事をさぼったからである。さぼったではなく熱を出したんだけれど。
どこで耳にしたのか、ゼクロムはここ数日毎日花を持ってやってくる。
結婚?するならジャローダ一択だ馬鹿野郎。

「名無しのために摘んできたのに!」
「ジャローダ。追い出して」
「……」

やはり無言で追い出すためにリーフストームを使ったジャローダ。
舌打ちをして躱していくゼクロム。
私のジャローダは無口だ。今まで一度もしゃべってくれたことがない。でも、私をずっと守って来てくれたのはジャローダだから。
旅の途中でたまたま出会ったゼクロムが結婚を言ってきても意味がない。
恋愛は本人がするもの。
ゼクロムが私を好きでも私はジャローダが好きだから。
当のジャローダが表情を変えたことは一度もないけれど。

「こんな無愛想な蛇のどこがいいの!?俺の方が名無しに似合うだろ!?」
「だから寝言は寝て言え。そして帰れ」

どんなにボロボロにされても全く懲りないゼクロム。
無表情のままそのゼクロムを足蹴にするジャローダ。
どう見てもカオスです。
普通のポケモンにやられるなよ伝説様。
私のジャローダが最強なのが知れるだけじゃないか。
もちろん他のポケモン達も強い。チャンピオンに勝つ程度には強いんだ。
ただジャローダは特別強い。
他のポケモン達が言うには夜毎にトレーニングをしているらしい。
話がそれたが、たかが伝説様に後れを取る私のジャローダではないのだ。

「名無しを守れないだろ!?」
「今の状況を見て」
「名無しのスリーサイズだって知らないだろ!?」
「お前知ってんのかコラ」
「名無しの写真だって持ってないだろ!!!?」
「よし分った。ジャローダやれ!!!!!」

スリーサイズならまだ許してやれたけど、写真は許さん。
いつもよりも鬼気迫る迫力で技を繰り出すジャローダ。
悲鳴を上げながら逃げていくゼクロム。
さっきより速くないですか。逃げ足は速いようで、戻ってきたジャローダが不機嫌だ。
それが手に取るように分かる程度には、親しい。
もっともここまで機嫌が悪いのは珍しいけど。

「ジャローダ?どうした?」

不満げなままジャローダがお茶を用意してくれた。
ハーブの香りが広がりとても美味しい。
そのお茶で彼の気分がよく分かった。
不満げなのは、盗撮に気付かなかったことと、ゼクロムのストーカー行為に気付かなかったこと。
守ろうとしてくれているのがよく分かる。

「ジャローダ」
「……」
「大好きだよ」
「名無しがいいならそれでいい」

ジャローダの機嫌が落ち着いたのを私はただ、笑ったんだ。

お粗末様。

[*前へ][次へ#]

5/11ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!