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小説
ナエトル♂
やっと、親の許可が下りた。私も今日からトレーナーとして頑張ります。
可愛いポケモンをゲットして、かっこいいポケモンをゲットして、目指します!チャンピオン!

「名無し。相変わらず不細工だね」
「最初から躓きましたよ畜生!トレーナーに向かってなんて口聞くのナエトル!!!」

とか思っていた時期が私にもありました。
順調にいかないことはよく分かっていた。でも、これは酷い。博士に見せてもらった最初の三体の内、私が選んだのはナエトル。
他のどの子よりも目をキラキラとさせて、選んでと心からアピールしてくれていたのに、いざ一緒になるとこれだ。酷くないですか。
憧れの最初のポケモン。
ナタネさんに憧れて、選んだナエトルは、可愛い顔をして私に限定で毒を吐く酷い子でした。
けれどリリースなんてしたくない。
必ず、この子と仲良くなってみせると心に決めていたのに、もうすでに心が折れそうです。

「後ね?それ」
「それ!?」
「下着透けてるけど」
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!?なんでもっと早く言ってくれないの!!!?」
「こんなんが僕のパートナーかぁ。先が思いやられるよね、名無し」

笑顔はとっても可愛いんです。でもこういうことはもっと早く言うべきだ。というか、今はマサゴタウンを出たばかり。今更服なんて脱げるはずがない。
下着が空けているなんて、年頃だから言わないでいてくれたんだなぁ。
私はポジティブになれません。ここまで来るのに戦って来た数人のトレーナーの中には男もいたんだよ。
女の子の私が、そんな中下着を見せるようにここまで来た。
どう考えてもただの変態です。有難うございます。

「何人かじろじろ見てたよね。こんなない胸見ても何も思わないだろうに……」
「やめてくれませんか!?成長途中の女の子を馬鹿にするのは!!!!」
「え、名無しって女の子だったの?てっきり男かと」
「ねぇ泣いていい?私だって傷つくんだよ!!?」
「知ってる」
「清々しい笑顔ですね!!!最低か!!!」

詐欺だ。これはもう詐欺だ。泣きたい。
あんなに可愛かったのに、こんなに性格が悪いとか。酷い。
グスグスと膝を抱えて泣く私。
ナエトルは何も言わないでいる。
もうこれは変態街道を突っ走るしかないのか。
嫌だ。私は普通のトレーナーとしてジムを制覇するんだ。間違っても変態として制覇なんてしない。

「……。名無し」
「何よ!?」
「野生のビッパみたいだけど、どうするー?」
「!?」

ナエトルが指差した先に、特徴的な歯をしたポケモン、ビッパを見つけた。
幸いにあちらは私たちに気付いていない。もやもやとした気分を振り払って、私は勢いよく立ちあがった。

「ナエトル、まだバトルいける!?」
「まぁ頑張るよ」
「よし、やろう!」

ここまで数人と戦ったから、バトルの仕方は分かっている。新人として最初のゲット、ミスはしたくないから。
気合を入れるために頬を叩いて、ビッパを見据えようとして、視界をふさがれた。

「ぶ!?」
「貸しといてあげるねー、最初だからミスしないでね」
「……ナエトル」
「はい、なぁに?名無し」
「まずは体当たりだよ!」
「任せて!」

ナエトルは自分の上着を私に投げてくれた。
些細なことだけれど、この上着分は認めてくれているのだろうか。
そう考えるとうれしいから、にやける頬を必死で引き締めて、私は声を上げた。
まだまだ未熟なんだ。
だから焦らずに行こうか。
ねぇ、ナエトル。

お粗末様。

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