[携帯モード] [URL送信]

小説
レパルダス♂
「傷薬、元気の欠片、なんでも直し、モンスターボール、……穴ぬけの紐とゴールドスプレー。後食料、か」

周りが騒がしい。
それも仕方ないだろう。
目つきのキツイ俺が、フレンドリーショップで大量に買い物をしていれば、おのずと目立つ。
この顔のせいで絡まれること早数百。
ことごとくシャドークローで追い返してきた。そのため無駄な経験を積んだと心底思う。
その原因である俺の主、名無しはひたすらダメ人間だ。
どうして俺が実力者と間違われなければならないのかと言いたくなるほどのダメ人間だ。
そもそも名無しは部屋から出てこない。
曰く、「働いたら負けだと思うんだ」と。
馬鹿でしかない。
結果、俺がこうして日毎に買い物をしてくる破目になる。
昔はまだ毛づくろいをしてくれていたのだが、今じゃ立派なニート。
悲しすぎる。
もともと俺達レパルダスは冷酷ポケモンと言われているのに、チョロネコから育ててくれた恩返しにと、行ってはいるが、そろそろ限界である。
同じ群れのやつに会えば、ただひたすら憐れまれてしまいには、愚痴ぐらいなら聞いてやると肩を叩かれる始末。
知り合いのトレーナーたちにも生暖かい目で見られて、気分転換に酒に連れて行かれて。
どう見えているんだ。なんて聞けない。
だからそこ、今日こそはあの馬鹿を、部屋から出す。せめて家から出してやる。
そう思って帰って来てみれば、一瞬で消える決意。

「名無し、この鍋はなんだ?」
「鍋?見て分かるでしょ」
「ああ、カレーk」
「シチューだ、馬鹿たれ」

ぐつぐつと沸騰している、明らかに黒いもの。
これをシチューと言うか。
野菜一つ浮かんでいないこれをシチューと言うのか。

「ちなみに材料は?」
「クルトン、パン。肉、コンソメ、しょうゆ、砂糖、しお、こしょう、味噌、酢、イカ墨、油、みず、赤ワイン、白ワイン、みりん、何かの素、ゼラチン、チーズだ」
「おい待て、まともな材料が入っていないぞ!!?」
「?さ、食え」
「誰が食うか馬鹿野郎。名無し。お前が食ってみろよ」
「だが断る」

料理ができないんじゃない。
ただガチでやり方を知らないだけだ。
怠惰もここに極まり。
と言うか、俺は出かける前に食事を作り置きしていたはずだが。
無言でゴミ箱を見てみれば、何故かタオルが捨てられていた。
苛立ちを押さえつつ家の状況を確認すれば、好き放題に散らかして、服を着替えようとしたのか……しようとして諦めたが正しいか。
俺男なんだけど。せめて下着ぐらいは隠せよ。

「名無し、俺が作っておいたものは?」
「食った」
「十分足りる量だったろ!?」
「腹八分目じゃ足らん!」
「お前は食いすぎなんだよ!!そして服を着ろ!!」
「え、めんどくさいですマジで」

真顔で言い返してきた名無し。
もうこいつ殴っていいか。
一応トレーナーだけど、限度があるだろう。
下着姿でうろつくな。
せめて服を着てくれ。
そこで妥協してやるから。

「お腹が空いた!なんかできたら部屋に持ってきてねレパルダス」
「名無し、せめて服着ろ。そしてここで待ってろ」
「え、断る」
「いい加減殴るぞこのニートが!!!!」

お粗末様。

[*前へ][次へ#]

10/11ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!