ため息だらけの日曜日(土神)
久し振に取れた休日をゆっくりと過ごすはずだった土方に近藤から隊士の1人が体調を崩してしまった為、急遽その変わりにと頼まれ今は1人見回りの巡回をしていた。
「はぁ〜…ったく折角取れた久々のオフだったのによぉ」
ぶつぶつと愚痴を言いつつ街中を歩いていると後ろから大きな声で呼ばれた。
「大〜串くん」
その声は聞きなれたソプラノ声、振り向かずとも誰だかすぐに分かった。
振り返ればそこには思った通りの人物がこちらに向かって来る。
「俺は大串じゃなくて土方だ!!」
「名前なんて別に何だっていいダロ」
「よくねーから言ってんだよ!」
「煩いアル。お前だって私の事ちゃんと名前で呼ばないじゃんかヨ」
確かに土方も神楽の事を一度も名前で呼んだ事が無かったので何も言い返せなかった。
「それより、お前日曜日なのに休まず仕事アルか?」
「あぁ、本当は今日久々の休暇だったんだが近藤さんに頼まれて急遽俺が巡回の仕事する事になっちまってな」
「ふ〜ん…」
「まぁ、そういう事だ。それに今仕事中だ、生憎お前に構ってられる程暇じゃない。じゃーな」
そう言って神楽に背を向け歩きだそうとした土方だったが、後ろから服の裾を捕まれ足を止める。
振り返ればそこには、ニタ〜っと笑みを浮かべながらこちらを見ている神楽。
「…んだよ?さっきも言ったように俺は仕事中なんだ。早く手を離せ」
嫌な予感がしつつも服から手を離すように命じる。
「嫌アル。私今お腹空いて死にそうアル。大串くん助けてヨ」
「それなら家に帰って飯食えばいいだろ!」
「家に辿り着く前に行き倒れしそうアル」
今までの経験上、何を言っても無駄だと知っている土方は大きなため息をつく。
++++
昼食を散々奢らされ、今は公園のベンチで休憩している。
土方は煙草を吸いながら隣に座る神楽を見ると、空腹だったお腹が満たされ満足そうにしている。
そると、神楽がこちらを向き話し掛けてきた。
「お昼奢ってくれてありがとナ!助かったアル」
ニコっと子供らしい笑顔で言う神楽。
偶に見せる無邪気な神楽の笑顔は正直可愛いと思ってしまう。
「お昼奢ってもらったからお礼に私も一緒に巡回の見回り手伝ってやるヨ」
急に立ち上がり土方の前に来たと思ったらそんな事を言い出した。
「気持ちだけで十分だ」
「駄目アル。それじゃ私の気が収まらないネ!!」
「…分かったよ。但し絶対に面倒事だけは起こすなよ」
「了解アル」
「んじゃ、行くぞ」
「おう!」
はぁ〜っと、またため息をしつつも偶にはこんな日も悪くないなと思う今日この頃。
ため息だらけの日曜日
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