小説 叶わない(佐助) 俺様が好きな彼女は、もう既に他の人の物で。 ましてや、自分の上司の許婚だったりしたら、もう手の出し様が無くて。 焦げる想いは、今も胸でじりじり黒い煙を上げる。 あの笑顔が俺様だけに向けられれば。 もう、それ以上の願いは無い。 あの日。 『佐助』 俺様を呼ぶ、涼やかな蓮見姫の声。 『どうして、本当に欲しい物は手に入らないのでしょうね…』 俺様を見据えて紡いだその言葉の意味。 『わたくしは、佐助を…』 そう云った彼女の口唇。 塞いで仕舞いたかった。 『貴女とは、来世で…』 奪う度胸の無い俺様を許してくれ。 その代わり。 一生を懸けて、お護り致します。 貴女を。 それが、俺様の叶わぬ想いの化身。 [*前へ][次へ#] |