小説
正体(幸村)
俺は最近おかしい。
いつも、頭の中に蓮見が居る。
お館様との殴り愛の最中にも。
甘味に舌鼓を打ってる時にも。
毎日の鍛練の最中にも。
はたまた夢の中にまでも。
おかしい。
こんな事は初めてなのだ。
『幸村』
『ぬおっ。何だ蓮見ではないか』
『何だとは何よ。あんた、驚き過ぎじゃない』
『いっいきなり声をかけるからだ』
『ふぅん。変な幸村』
んべっと舌を出して去る蓮見。
憎まれ口を叩いて居る蓮見でさえも可愛いと思ってしまう。
その声すら愛おしく感じてしまう。
この気持ちの正体は…。
−−−−−−
『旦那』
『!佐助』
『どしたの、何か浮かない顔しちゃってるけど』
『うむ…。最近、俺の頭の中に蓮見がいつもおるのだ…』
『へぇ』
『何故だか物凄く愛おしく思ってしまうのだ…』
『ほぉ』
『こんな事は初めてなのだ。佐助、俺はどうしたのだろうか…』
返事をする度に意地悪そうな顔になって行った佐助は、俺にこう云った。
『旦那。それはね』
『恋なんだよ』
『こ、こ、こ、恋!!』
いつもの様に、叫びそうになったが、案外悪くない気持ちだな…と俺は思った。
−−−−−
−−旦那が恋ねぇー。大人になっちゃってー。
−−う、煩いぞ、佐助!!
−−顔真っ赤だよ、旦那ー。
−−主君をからかうでないわ!
−−はいはーいと。あ、蓮見ちゃん!!
−−ぬっ。ぼんっ。
−−あーらら…。意識し過ぎちゃったのかね。爆発しちゃったよー。
まだまだ、純な幸村。
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