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小説
ずるい彼女(佐助)

まただ。

この彼女のものうげな表情は何回目だろうか。

真田の旦那の彼女、蓮見。

二人の間に何かが有った時、相談役及び仲裁役は必ずこの俺様。

面倒だなんて思わないよ。

だって、この時ばっかりは彼女を独占出来るからね。



『もう…別れようかな…』

ぽつり呟く蓮見。

『蓮見ちゃん。勢いでそんな事云うもんじゃ無いよー』

俺様の口はこう云うが、心ん中では

『そうしろ。別れちまえば良い』

って思ってる。

何て腹黒。


ぽんぽんって頭を撫でてやると、涙目で俺様を見る。

何回見ても…この顔はやばい。

この俺様が、平常心を保つのが精一杯。

理性なんてどっか飛んで行っちまいそうだ。

彼女にこんな顔をさせる旦那が憎い。

と同時に羨ましくも有る。



俺様のせいでそんな顔になれば良いのに。

俺様のせいで心痛めれば良いのに。

俺様のせいで泣けば良いのに。



『蓮見ちゃん』

いつもいつも、俺様の前では無防備な君。

手を手繰り寄せると安易に俺様の胸の中に納まった。


『さ、すけ?』

何が起きたのか解らないといった様子で俺様の名前を呟く蓮見。

少し掠れた声。

堪らない。

このまま、めちゃめちゃにしてやりたい。



けど。



『幸村が…』


そう、やっぱり君の中には真田の旦那が居る。

何回この事実を突き付けられても、自分のこの想いが消せない。

だからと言って、旦那を裏切る事も出来ない。

自分の黒い気持ちと、こうしてささやかに彼女を独占する事でやり過ごしてるだけ。

俺様って、ほーんと損な役回り。




『あっと、ごめんごめんっ』

蓮見を自分の腕から解放してやる。

『蓮見ちゃん、男の前でそんな顔するもんじゃないよー。男はさ、狼なんだから襲われちゃうよー?』

『でも、佐助は…』

『例え俺様でも!』

いけね。

思わず声が大きくなっちまった。

ふと、窓の外を見る。


あれは。



『蓮見ちゃん。外、旦那迎え来てる』

『え、嘘?』

『嘘じゃないから。早く行っといで』

きょとんとしている蓮見を促す。

『もう、あんまり喧嘩ばっかするんじゃないよー?』

と後ろ姿に声を掛けると、ドアの入口で立ち止まった。

『佐助…』

『ん?』

『ごめんね…』

『え?』

『気持ち…』





蓮見の出て行ったドアを見つめる。




『はははっ』


なんてこった。


『ごめんね…か』


気付かれてたとはね。
俺様の気持ちに。



『ほんっと損な役回り!!!』



そう叫ぶと、俺様は後ろに寝転がった。





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