小説
素直(現代佐助)
『さーすけ』
あたしは、名前を呼ぶ。
『どしたの、蓮見ちゃん』
奴は、いつもの様に軽く返事をする。
あたしは、そのいつもと変わらぬ飄々とした態度を崩してみたくなる。
だって、あたしは奴の声を聞くだけで胸ん中大変な事になるってのに、当の本人は至って普通だなんて悔しいじゃない。
『あたしね…』
『うん?』
微笑みながらあたしの方を見てる奴に、意を決して云ってみる。
『佐助が、頭ん中にずーっと居るんだけど…これってどうしたらいいのかなぁ…』
『またまたぁ〜。そんな事言ってると好きになっちゃうよ〜』
顔色変えずに奴は云う。
いつもそう。
これっぽっちも伝わらないのよ奴には。
もう、慣れっこよ…。
はぁ。 と溜息を吐いたその刹那。
『ごめん。俺様さっき嘘吐いた』
いきなり、真面目な顔の佐助。
『え…?嘘ってな…』言葉を云い終わる前に手を引かれた。
『!!??』
気が付けばあたしは佐助の腕の中。
何が起こったかとパニックを起こしていると、ポツリと佐助が云った。
『好きになっちゃうなんて嘘。俺様、もう既に蓮見ちゃんの事好き』
何なのよ一体。
そんなに顔赤くしないでよ。
…でも、いつもと違う君が見れたからいっか…。
−−−−いつから好きだったの?
−−−−ちょっ。勘弁して。そんなの内緒!!!
−−−−今更照れなくても…。
−−−−俺様は硬派なの!!!
−−−−ハイハイ…。
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