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嘘と本音と。
食べたくない



「それに加えて問題を起こしてる方の奴らが最近裏風紀を名乗って本物の裏風紀をあぶりだそうとしている。裏風紀を名乗る奴に会っても信用するな。さっきも言ったがメンバーは俺しか把握してねぇんだ。俺以外からの連絡は罠だと思えよ」
「はい」

役員より偽の裏風紀の方が厄介のようだ。誰が敵か分からないのが痛い。

「さて、メシ食いに行くぞ」

時計を見れば短針が7時を指している。いつの間に…。
先輩に食堂に案内してもらって食事をとった。メールアドレスと番号の交換もした。裏風紀は普段は極力接触しないため連絡はすべて携帯でするらしい。





そして入学式の二日前、つまり僕が来て5日目までは先輩と食事を共にしながら学園の常識や、主要人物の名前などを教わった。正直新入生であり編入生でもあり特待生でもある僕には覚える事柄が多すぎて、一週間前に来ておいてよかったと思う。

そして昨日からは先輩とはただの隣人、顔見知りという設定だ。
というのも入学式の前日になると生徒が寮へ帰ってくるためである。
入学式である今日も会う予定はない。人目についてはいけないというだけの為に、知りあった先輩と普通に話すこともできないのか…と思うが、秘密にするとめには仕方がない。


いろいろ思い出したところで起き上がり、顔を洗いに行く。鏡に映るのは色素の薄い茶色の髪と、同じ色の茶色の瞳。ハーフなのだろうか、と思わせる外見だが、実際どうなのかは自分でも分からない。僕は母親しかしらないから。
顔を洗うと銀フレームの眼鏡をかけて寝室へ戻る。
そこで今日初めて着る真新しい制服を手にとったところでお腹が盛大に鳴った。


「―ああ、お腹すいてるのか」

実は先輩と食事をとらなくなってから丸一日経つが、まだ一口も食べ物を食べていない。施設に居る時もそうだった。一人になると食事をとる気にならないのだ。どんなに体が必要としても心が拒む。
…食欲欠落してるんだろうか。
朝ごはんも要らない、そう頭の中で呟いて、制服を着て部屋を出る。
廊下には人気がなかった。

それもそのはず、入学式はあと15分で始まる。
その入学式がある大ホールまでは20分といったところ。おそらく僕が一番最後だろう。
一階の受付の前を通ると受付のお兄さん(と呼べと言われた)、風見さんが僕に気づいて声をかけてきた。

「三神ちゃん、入学式だろー?いいのかまだ寮にいて」

完璧遅刻だろーとか暢気に言ってる風見さんに一言大丈夫です。とだけ答えて寮を出る。
普通に大ホールまで行けば遅刻だが、近道という奥の手がある。まぁ、寮の傍の雑木林を突っ切るだけなんだけど。
そして無事に大ホールへ着いた僕はクラスの列に紛れ込んだ。






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あきゅろす。
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