裏小説
春(ギン乱)1
この季節になるとあたしはあいつを思い出す
あいつ…
あたしの最愛の人…
流魂街で共に暮らした
「乱菊♪」
そうあたしを唯一呼び捨てにするあいつ
―――市丸ギン。
あたしは幼い頃からずっと一緒にいたあいつが大好きだった
ギンも同様に…
あたし達は両想いだった
ただギンは付き合おうとは言わなかった
「ボク死神になる乱菊が泣かんでもええようにしたる。…それが出来たら結婚しような♪」
――約束や。
にこりと微笑みあたしの制止も振り払い出ていったあの日
あたしはそんな日は来ない…
馬鹿なギン…
そう想いながらもいつかギンと2人で暮らせる日を夢見てた
―――――――
「乱菊やないの♪」
ある日の昼時
今日はどこでお昼を食べようかとさがしていた時に不意に声をかけられた
「ギン♪あんたも昼?今日は何処で食べようかと思ってさぁ〜♪」
楽しそうに話す乱菊を嬉しそうに見つめるギン
その視線に気付いた乱菊
「ん?何よ…あたしの顔に何かついてる?」
「そやなぁ♪ついてるわ♪」
ギンはクスっと笑いながら言う
「えっ!?やだ何ついてる!?」
あたふたと手鏡を取りだそうと胸元に手をやる乱菊に
「ついとる♪ついとる♪目と鼻と口♪」
ギンの言葉に乱菊の手が止まる
「当たり前じゃない!!もう!!」
ぷんすかと両手を腰にあて怒る乱菊
「あともうひとつ乱菊にはついてるもんあるなぁ〜♪」
ギンの言葉に乱菊はきょとんとして見やる
「…ここ♪乱菊の口元♪乱菊にしかないホクロがあるわ♪」
すっと乱菊の口元のホクロを触るギン
少しびくりとしながらも
「なんだ…食べかすとかついてるのかと思ったじゃない」
乱菊は紅くなる頬を誤魔化そうとギンの手を払いのけようとした
しかしギンの 男の力は容易く払い除けられなかった
「…ギン?」
あきらかに違う普段のギンに少し戸惑う乱菊
すっとなんの違和感もなく乱菊の顎を親指と人差し指で自分へ向け
軽いリップ音をたて唇を重ねた
「ン!…こらギン!!」
ぱっと身体を離すもギンは乱菊の腕を掴み
にっと笑い乱菊に微笑みかけた
「キス1つでうろたえてるん?」
「なっ!!」
乱菊の紅潮した頬を見ながら掴んでいた手を放す
「うそや♪乱菊の嫌な事して嫌われなないからなぁ♪」
乱菊に背を向け去っていく
その背を見つめながら
――全く…。
とため息を付きギンとは逆方向に歩いていると
顔見知りで副隊長仲間の五番隊副隊長 雛森桃とギンの部下で三番隊副隊長の吉良イヅルが仲睦まじく此方に向かって歩いてきた
「雛森〜♪吉良〜♪」
乱菊はすぐに声をかけ2人に駆け寄る
雛森と吉良も乱菊に気付き会釈する
「もうお昼終わった?」
乱菊がニコニコとお弁当片手に聞いた
「こんにちは乱菊さん♪」
雛森が微笑みながら声を発する
「あ…それじゃボクはこれで」
吉良は(また――)と会釈して去っていった
「何よ付き合い悪いわね。」
「三番隊は忙しいから」
むくれた乱菊の横で苦笑いしながらフォローする雛森
「ところでお昼すんだ?」
「あ…はい♪さっき吉良くんと阿散井くん達と♪」
にっこりと笑顔で答えた雛森に乱菊は残念そうに
「えー?本当〜?あたしも隊長無視して行けばよかったぁ」
肩を落とす乱菊を見ながら
「日番谷くん厳しいですもんね♪」
同情するように呟く雛森
「あ!雛森からも言ってよ〜」
雛森は日番谷とは幼なじみだ
雛森の言う事なら口は悪いがよく聞く事を乱菊は知っていた
「あたしがシロちゃんにですか??」
――シロちゃん 雛森は時々昔のクセで日番谷をシロちゃんと呼ぶ
その度に日番谷には怒られている
「雛森が言えば隊長も少し優しくなるかも♪」
ニコッと黒い笑みを浮かべ楽しそうな乱菊
「ふふふ♪」
おかしいと微笑む雛森
「いけないっ!早く食べなきゃまた隊長に怒られちゃう!じゃあねっ!」
フと時計を見て慌てて駆け出す乱菊
その背中を見ながら雛森は少し羨ましく思った
『隊長』がいる幸せを…
―――パタパタパタパタ
「何処で食べようー??」
小走りで走りながら落ち着いて昼を過ごせる場所を探す乱菊
そこへアイツがくる
「ギン♪」
「…あぁ乱菊♪」
「あんたはお昼すんだ?」
ニコッと微笑み話しかける乱菊
「…終わったで?乱菊まだ食べてへんの?」
きょとんとしながら乱菊を見て若干驚いたように言う
「そーなのよ…!」
思い出したように不機嫌になり腕を組む
「さっき吉良と雛森に会ったから誘ったら3人で食べたって言うのよっ!酷いと思わない!?」
プンプンと怒る乱菊がパッと思い出す
「あ…修兵がいたんだっけ」
「檜佐木くん?」
「あいつに付き合わせればいいのに忘れてたわ〜♪」
ガハハと豪快に笑いその場を去ろうとした
『檜佐木』の言葉にイラつくギン
「ボク暇やし一緒にいたろぅか?」
「…吉良に怒られるわよ?巻きぞえなんて喰いたくないからイヤ」
一瞬ビクッと身体が反応した
しかし2人きりは気まずいからと断る
「イヅル?いつもの事やない?ええよ♪怒らしとき♪ほな行くで♪」
乱菊の応えを聞くより先に乱菊の腰へ手を回し瞬歩で移動したのだった
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