体を、ぴとっ 『……』 足りないと思った。 なんだか足りない。 足りないのは嫌で…でもその足りないのが何かも分からないからどうしたらいいのかも分からない。もやもやしながら庭園側の縁側にちょこんと座り、足をブラブラと動かす。 『う〜ん』 何時も側にいるヒバードの姿も無く、広いこの場所で、一人の名前。 可愛い唇を突き出し不満気な顔を作ると、縁側に体をゴロリと転がり、足はそのままブラブラと動かす。 『はう…』 大き過ぎるため息が木霊する。 「凄いため息…」 淡々とした呟きに、名前は体をピクリと反応させ、転がったまま顔を声のする方に向ける。 『きょうやくん!』 雲雀の名を叫ぶと、くるりと体勢を変え起き上がるその素早さは、子犬が嬉しそうにはしゃぐ姿と似ていて微笑ましい。 もし、名前に尻尾が生えていたとしたら尾が千切れる程振っているに違いない。 まさに子犬の如く喜びながら、立ち上がって雲雀に向かってパタパタと走り夜と体を、ぴとっとくっ付ける。 足りないと思っていた問題の回答に気付き、その回答は今自分の側にある。 雲雀も、溺愛している名前に甘えられれば嬉しく、他人には決して見せる事のないであろう優しい微笑みを、愛しい子へと返す。 「甘えん坊だね」 名前の柔らかい髪をクシャリと撫でれば、その手にすり寄るように首を傾け甘える名前。 『きょうやくん。おかえりなさい』 くっ付いたまま見上げれば、雲雀の優しい顔が瞳に移る。 ドキドキ…。 あれれ?ドキドキ?? 胸がドキドキする。 何故ドキドキするんだろう。少し、眉をハの字にして悩むような顔になる。 んと…んと…。 考えても分からなくて、雲雀に更にぎゅっと体をくっ付けてみる。 「?」 雲雀は、そんな名前の動きを不思議に見詰め、名前の髪に触れていた手を動かし、ぷっくりした頬から顎までなぞるように触れ、顎を上に上げるようにすると、名前と雲雀は見つめ合い視線が絡み合う。 「どうかした?」 訳も分からずドキドキしている名前。雲雀に「どうかした?」と聞かれても答えようもない。 不思議な気持。 そして気が付かない内に、名前の頬は赤くなっている。 その頬を、雲雀のスラリとした指が触れる。 「顔…赤いよ?」 『う?』 「熱があるの?ふらふらする?」 何時もと違う名前の様子に、雲雀も理由が分からず、顔が赤い事から体調が悪いのだろうかと心配そうに眉を顰め、額に触れる。 『ねつない!げんきだよっ!!』 「……そう?」 『あんね、んと…』 「何?」 『ん…わかんないけど…こうしてっと、うれしぃ』 名前は更に自分の体を、ぴとっとくっ付けてくる。 「僕も嬉しいよ」 『えへへ…』 名前を抱き上げ、優しく抱きしめると、雲雀は名前の頬にキスを落とすせば、嬉しそうにはしゃぐ名前。 何時もの光景。 名前の中でのドキドキは、本人にもまだよく分からないものだったけれど、それは小さな恋の始まり。 何だか足りないものが、満たされ、溢れてドキドキしたその気持ち。 不意に溢れた、いつもの好きよりもっと大きい気持ち。 名前にそれが愛しいという気持ちだと分かるのは、まだまだ先のお話。 それまでは無邪気にくっ付いいて…イチャイチャ。 2010/04/17 呟き。 好き<愛しい と…自分の中では思います。 愛してるより、愛しいと言う言い回しがなんだか好き。 [*前へ][次へ#] [戻る] |