はろうぃん*に
雲雀に会えると言うサプライズで、名前の廊下を歩く足取りも軽い。そして何やら謎の鼻歌混じり。
そんな浮かれた通り掛かりに、ふとリビングを見ると、ソファーに座り、お茶を飲んでいる獄寺の姿を発見するハル。
「名前ちゃん」
『うお?』
ハルに呼び止められ、謎の鼻歌を止めキョトンとハルの顔を見つめる。
「資料室に行く前に、ちょっと寄り道して行きませんか?獄寺さんがあそこにいますから、菓子をもらってみてはどうでしょう!」
『……』
雲雀の方が気になる名前ではあるものの…お菓子も気にならない事もない。
う〜んと唸る名前。
「雲雀さんならきっとまだ来てないよ。さっき連絡きたばかりだしね。すこし位時間はあるはずたよ」
ツナにそう言われれば、やはり花より団子ならぬ。目先のお菓子!頷いてリビングに居る獄寺の方へとトコトコと近づいていく。
ツナとハルは、入口の影に隠れてその模様を楽しそうにコソコソ観察する。
「あっ。今回は名前ちゃん。ちゃんと言えてるみたいですよ!」
名前と獄寺のやり取りを見守るハル。
「まぁ、2回目だしね。ん?隼人の奴なんか顔赤くなってない?」
名前の最初のハロウィンの合い言葉は聞こえたものの、離れた所の二人には会話がよく聞こえず、やり取りする仕草しか分からない。
「そうですか?ん〜言われてみれば…そんな気もしますが…」
「アヤシイ…」
ツナが疑いの眼差しを向ける中、ツナの存在に気が付いていない獄寺が、名前の頭を撫でているのか、小突いているのか分からない光景を繰り広げている。
そして、名前は獄寺に手を振ると、パタパタとツナとハルの居る場所に戻って行く。
名前を見送って見ていた獄寺が、ツナの姿を見つけ、なにやらワタワタと慌て始める。
「名前!ちょ、ちょっと戻って来い!」
『ほえ??』
呼び止められ戻る名前に、獄寺は言い聞かせるような顔を向けると、小さな声でヒソヒソと名前に告げる。
「いいか!今の…10代目に言うなよ」
『いまのぉ??なに?』
「ったくなんであそこに10代目が…いいから言うなって!分かったな」
『う…???うん?』
意味が分からない名前ではあるものの、真剣な顔の獄寺にコクリと頷き、入り口で待つ二人に獄寺からもらったお菓子を掲げながら嬉しそうに戻って行く。
『はやとから、おかしもらったよぉ〜。みてみてぇ』
名前のが掲げているお菓子を見ると、小さな小瓶に色とりどりの小さな星のようなものが入っている。
「わぁ〜可愛いです。金平糖ですね」
『こんぺと??』
「そうです。こんぺいとう」
『おほしさまみたいできれいだよ』
「ふふふ。そうですね。良かったですねお星様がいっぱいもらえて」
『うん。ハルちゃんにもあげるね』
小瓶を懸命に開けてようとする名前に、ハルは慌ててそれを阻止する。
『お?ハルちゃん…いらない?』
残念そうな顔をすると、ハルが名前の頭を撫でながら笑う。
「違います。それは、名前ちゃんのもらったお星様ですから、大切にしてください。名前ちゃんたら、すぐ皆になんでもあげようとするんですからーたまには、独り占めしていいんですよ」
そういうハルの言葉に、ツナも頷いて名前の顔を覗き込む。
「俺達はね、名前ちゃんが喜んでくれればそれでいいんだよ。もっと俺達や、ハルや、ん〜雲雀さんに甘えていいんだからね。名前ちゃんの我侭たまにはオレ聞きたいなぁ〜」
『……』
驚いた顔でツナとハルを交互に見つめる名前。
『と…ね、じゃぁ…いつもいっしょいて?』
名前の言葉に、思わずハルが抱きしめる。
「もーそんなの、全然我侭じゃないですよー!!!!それに、言われなくてもハルはいつも一緒ですからね」
ツナも、そんな事でいいの?と頷く。
そんな二人の言葉が嬉しくて、笑う名前を更にハルがギュッと抱きしめる。
『ハ、ハ、ハルちゃんくるじぃ……』
「とー!!!そうだ!資料室行かないと。雲雀さんが来ちゃうね」
『うん』
「はひ!そうでした!早く行きましょう!」
資料室に向かいながら、ツナはふと名前に質問をする。
「ねぇ名前ちゃん。さっき、隼人とどんな話しをしたの?」
『ん?んとーぉねぇ。ないしょなの』
「内緒?」
『ってーはやとが、いってた』
ふーん。頷きながら、少々黒ツナ光臨のようで、視線を上に上げなにやら怪しげな顔をする。
後で、隼人を問い詰めてみようかなぁ〜。でも、あの様子じゃオレに言いそうもないし…。
金平糖を見ながら歩く名前を見下ろし、それよりも名前ちゃんに、少ししたらさり気なく聞いた方が早いかもなぁ。
名前にとっては、特に気にする事でもない出来事のようで、きっと教えてくれるに違いない。
そして、隼人をからかうネタにしよう。
離れた資料室で、パラリとレポートのページを捲りながら、静かにそこに書かれた文字を目で追う雲雀。
彼は既にツナの屋敷を訪れ、やはりツナの元を訪れる事無く足早に自分の求めるものの所へと足を運んでいた。
一通り目を通し、一息付くとレポートを机にパサリと置く。
「あまり進展は無いな…」
用事も終わり、ココに居る意味も無くなったとレポートを元の場所に戻して立ち去ろうと思った矢先、突然扉が開き仮装した名前がぴょこりと部屋に入って来た。
「ワオ。なに?どうしたのその格好…」
魔女の仮装をした名前をマジマジと見つめる。
雲雀は、目の前に急に現れたいつもと違う名前を見つめ、微かに目を見開いて驚いているように見える。
『んと。お菓子をくれないと、いたずらしちゃうよぉ』
「……」
『あれ???』
無反応の雲雀に近づき、顔を覗き込む。
「あ…今日は、ハロウィンか。それで、その格好なの?」
『うん。あのね、ハルちゃんが作ってくれたのぉ』
クルリと回って雲雀に見せる。
『あのね、まじょさんなの』
「ふーん」
『でね、でね、まじょさんわぁ〜おかしをもらえないと、いたずらすんの』
雲雀に笑顔を向ける名前を、フワリと抱きかかえると、ニヤリと名前に笑い掛ける。
「ワオ。イタズラって僕にかい?」
『うん。そうだよぉ』
「残念ながら、お菓子は持ってないから…イタズラの方にしてもらおうかな」
『う??』
思っていなかった雲雀の回答に、動きが止まる名前。
うーんイタズラ…どんなイタズラをすればいいのかと悩む。
「ねえ。イタズラしないの?」
クスクス笑いながら、可愛いねと呟く雲雀に
『とねーとー』
雲雀に抱きかかえられながら、眉間にシワを寄せ唸って悩む名前。
そんな悩む名前の眉間のシワに、雲雀の指が触れ軽く小突く。
「ねぇ。そんな面白い顔しないでよ」
『お?おもしろいかおちがうよぉ』
「Trick or treat」
『????』
名前の耳元に顔を近づけ囁く。
「僕は、お菓子はいらないから。イタズラするよ」
クスクス笑って、名前の頬に手を沿え、名前のおでこや頬にキスをする。
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