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name
オレンジ色の夕日を背に纏った青年は、小さな子供を見下ろし、再び不機嫌そうな面持ちで語り掛ける。

「ねぇ。何してるの?」

境内に居るのは、名前、黄色く小さな鳥、そして青年の、二人と一羽。
境内の静けさと、見下ろす青年の無表情さが、名前の中に、緊張感のようなものを与える。が、視線を上に向ければ、青年の頭の上で鳥が飄々と寛いでいる。
名前にも分かる。このミスマッチな取り合わせ。

その光景を、ジッと見詰める。

もしかして……こわない?
だって…とりさん、たのしそうだもん。

青年の質問に、名前は、おずおずと答える。

『んと、んとね、おかあさん…まってんの』

こんな時間まで幼い子供を、一人でここに待たせる母親がいるのだろうか…?
しかし、本人がそう言うのだから間違いは無いのだろう。

「そう…」

青年は、短い返答だけ返し、名前を見つめると、名前の座る階段の横に自分も静かに腰掛けた。

時が止まったかの様な静かな空間。
静か過ぎるこの状態が、幼い名前に絶えられる訳もなく…直ぐに沈黙は破られた。

『あ、あのね、えとね、そのこ…なまえなんての?』

青年の頭に乗る鳥を、名前の小さな指が指し示す。

『と〜っても、えらいとりさんだね、おはなしできんだもん』

「……」

『んと、んと、それにわたしのなまえもよんでくれたんだよぉ』

えらい、えらいと連呼する名前を、ジッと見つめる青年の視線になんだか落ち着かなくて、名前は更に何か話さないと居られない気持ちにさせられ、懸命に頭を巡らすものの…次の言葉が思い付かず、ワタワタと意味のない動きを繰り返す。

「名前…」

『え?なまえ?』

「そう。君の」

青年が自分に興味を示してくれたのが嬉しく、名前は、顔を輝かせながら雲雀に笑顔を向け、元気に自分の名前を言った。

『名前だよ』

「そう」

短い返答。
そして、また静寂。

あれれ?おはなし…できたのにぃ…おしまい?

名前に、興味があるのか無いのか分からないその青年の態度に、少し不満を感じるものの、誰かが側にいてくれるというだけで、さっきまで感じていた不安は何処かに消えていた。
少々緊張を伴っては、いるものの…。

『あ、あのね』

「ヒバード」

『えぇ?』

「名前。」

『ヒバードぉ?』

急に言われた名前に、首をちょこんと傾け考える。

(んと〜だれの?)

名前の中で?が飛び、その疑問が表情に現れて、う゛〜っと顔を歪める。
青年は、ゆっくりと指を頭の上を指す。

「この子の名前」

『ヒバード!かあいいなまえだね』

「ヒバード!ヒバード!名前をカタカナで!ナカヨク☆」

ヒバードは、可愛いと誉められたのが分かるらしく、青年の頭から飛び立ち、二人の頭上をクルクルと飛び回る。

『ヒバードよろしくね〜ぇ』

名前は嬉しくて、飛んでいるヒバードを捕まえるつもりなのか、すくっと立ち上がると、笑いながらヒバードに向かって両手をのばす。

その横で腰掛けていた青年が静かに、

「雲雀恭弥」

そう言った。

名前は、両手を伸ばしたままの姿勢で、顔だけを青年に向け、またちょこんと首を傾げる。

『ひばりきょうやぁ?』

「そう、名前。僕のね」

『おおぉぉ』

青年の名前を聞けたのが嬉しくて、妙にテンションが上がる。
その、名前の行動が可笑しかったのか、雲雀は「ククク…」と笑い名前の頭をクシャリと撫でた。

雲雀が笑ったのが嬉しくて、名前も雲雀の真似をしようと全然似ていはいないが…「くくく」と笑って雲雀を見つめる。

『えへへ』

「マネしないでくれる?」

そう言う雲雀の表情は、不満気になっているものの、先程までの冷たさは消え、名前は安心感を感じる事が出来た。

「ヒバリ、名前をカタカナで、ナカイイ、ナカヨシ」

「……」

そして、これから雲雀がする質問が、名前が忘れそうになっていた、現在自分の置かれた立場に、気付かされる事になる。

「で、君はいつまでココにいるの?」

『いつまで?』

(おかあさんがくるまで。おかあさん…くるから。くるまで…まってなきゃ…なん…ない…の。)

頭の中では言える言葉。
でも…何故か雲雀にその言葉を伝える事が何故か出来ず、名前は自分の服の裾をギュッと掴みながら、下唇を噛み締める態度で、答えを雲雀に返す事が出来ない。

いつまでも迎えに来ない母親。
幼い、名前でも導き出せる一つの不安な答え。
でも、言えないその答え。
大好きなお母さんだから…。
だからココでずっと待っている。

「おいで」

『ん?』

「僕に着いて来なよ」

『で、でもぉ…』

「君に拒否権は無いから」

(きょひけんて…なに?)

雲雀は、名前に向かって手を伸ばし、名前の手が雲雀の手に触れるのを静かに待つ。

「名前をカタカナでクル、ヒバリトイッショニ、イコウイコウ」

夕焼け空から夕闇に変わった空に、ヒバードがクルクルと楽しげに飛び回っていた。



2009.4.29
2009.11.10修正
*ATOGAKI******

雲雀さん!やっと自己紹介だ出来ましたぁ
さて、名前ちゃん雲雀さんと仲良くできるかなぁ?
名前さんも、雲雀さんと仲良くできるか一緒に見守ってやってくださいませ。
でも…仲良くなりすぎると…雲雀さんがロリコンになっちゃいますか???

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