contact その日はとても暖かくて、天気が良いってだけで気分が良くなるそんな日。 並盛神社の境内の階段に、小さな女の子がチョコンと座っている。 手にはクッキーの入った袋を持ち、たまにその袋の中をチラリと覗き、その度、嬉しそうにへらりと笑う。 『はやくおかあさんもどってこないかなぁ〜 いっしょにくっきぃたべたいなぁ…』 そんな女の子の頭上を、小さな黄色い鳥がクルクルと回り飛んでいる。 自分の頭の上を飛ぶ鳥に気が付いた女の子は、口をポカンと開けながら立ち上がると、これでもかという位にに手を伸ばし、空に向かって大きな声を出す。 『うわぁーとりさんだぁ!おぉぉーぃ!とりさぁーん!!!うおーぃ!!!』 黄色い鳥に一生懸命手を振るものの…鳥に言葉が通じる訳もなく、懸命なオーバーリアクションが空回りしているように思われた。 しかし、黄色い小さな鳥は、呼び掛けが分かるのか、空から降りて来ると女の子の頭の上にポフッと乗って羽を休める。 『うわわわぁ。とりさんこんにちわ』 小鳥が頭に乗ったのが嬉しくて、興奮しながら声を上げて笑う。 『ねーねーとりさん。おなまえなんてーの?わたしは名前だよっ』 思わず自己紹介をすると、鳥は小さな黒い瞳をパチパチさせ、女の子の頭の上に乗ったままクチバシを開ける。 「名前をカタカナで、名前をカタカナで」 まさか鳥に自分の名前を呼んで貰えるとは思わず、驚いて今度は名前が、目をパチパチとまばたきを繰り返し、また直ぐ笑顔になってはしゃぎ出す。 『うぉぉー?とりさんおはなしできんの?えらいんだねぇ』 「ヒバリ、ヒバリ」 『ほえ?ヒバリ?とりさんのおなまえヒバリってぇの?』 「カミコロス!」 『???え???なに??へんなのーぉ。でもいっぱいおはなしできんだね〜っ』 名前は、自分の頭の上に乗る鳥に『えらい、えらい』と繰り返しながら、そっと撫でてやる。 鳥は撫でられて、嬉しそうに名前の小さな手に擦り寄って来る。 その鳥を、そっと両手で抱え頭の上から下ろすと、手のひらに乗る暖かく柔らかい羽をした小さな鳥を嬉しそうに見つめる。 すると、鳥も首を傾げる様な仕草をしながら名前を見つめ返す。 「ミードリタナビクー♪ ナミモリノー♪」 急に歌いだした鳥にビックリしたものの、それが楽しくて笑い返す。 『おおおおー?おうたもうたえるんだーぁ』 名前は、先程手にしていたクッキの袋を覗き込み、クッキーを小さく割ると、黄色い鳥に与える。 『いいこだからあげんね。こっちはわたしのだからたべてへいきよ。もういっこは、おかあさんのだから…あげらんないけど』 鳥がクッキーの欠片を美味しそうに啄ばむ姿を眺めていると、名前のお腹がクーと鳴った。 「名前をカタカナで オナカヘッタ ヘッタ クー!クー!」 『うー。だいじょぶだよぉ。もうすぐおかあさんくんもん』 鼻先にシワを寄せ、ご機嫌斜めな顔をしながら空を見上げる。 先程まで広がっていた青空は日が傾いて、オレンジ色が広がって夕焼け空に変わろうとしている。 何時もなら夕焼けが綺麗で、ワクワクするはずの空も、今日に限っては名前の心を不安にさせるものでしかない。 『おかあさん…おそい…』 なんだかとても寂しい気持ちがこみ上げてきてしまう。 名前は、寂しさに瞳から涙がこみ上げてきそうになるのをグッと堪え、下唇をぎゅっと噛み締める。 『な、な…なかないよぉ…ぅぅぅ』 「ねぇ、君…こんな所で何してるの?」 俯いていた名前の頭上から、静かに少し低めの声がして見上げると、そこには長身のスラリとした黒いスーツに身を包んだ黒髪の青年が、少し機嫌の悪そうな面持ちで立っていた。 『……うううう…???』 名前は、涙を堪えるのに一生懸命で返答が出来ず、しかめっ面のままで青年を見上げる事しか出来ない。 「ワォ、凄い変な顔だね」 『ううううう…変じゃないもん……』 青年の言葉が名前の涙モード突入を早めようとしていた矢先… 名前の側にいた鳥が、パタパタと飛んで青年に近づいて行く。 「ヒバリ、ヒバリ」 『あ、とりさん…うぉ!?』 黄色い鳥は、青年の頭の上にポフッと乗って目を細めながら寛いでいる。 そのなんだかミスマッチな光景に、名前は涙モードから一挙に、面白いものを発見した時のワクワクモードに気持ちが切り替わり、目をキラキラさせながら青年を見つめる。 『うわぁ、とりさんのおともだち?』 「ねぇ、君、ぼくの質問に答えなよ」 『ふぇ?』 「ここで…何してるの?」 青年のぶっきらぼうな物言いに、名前はキョトンとした顔を向けると、心の中で呟く。 (とりさん…このひと…こあい…よ??) 2009.4.27 2009.11.4修正 **ATOGAKI**** あ、やっと雲雀さん出ました。 それも、最後にじゃん えへへ さて、これから名前ちゃんとどうなっていくでしょうかー お楽しみにー☆ [*前へ][次へ#] [戻る] |