おはよう(山本)
クラスに好きな男子がいる。
でも、私の事なんてただのクラスメートとしてしか見られていない。
もう少し近付けたらいいのにと思うけど勇気がでない。
朝からそんなマイナス思考の自分がなんだか虚しい。
『はぁ…バカみたい』
「よぉ。おはよう!朝から何、独り言言ってるんだ?」
『わっ、山本君!な、なんでもない…よ』
「ふーん。そっか?朝から考え過ぎ良くないぜ」
山本君は、私の隣の席にドカリと座り、爽やかな笑顔を向ける。
その笑顔罪です。
山本君は、とても明るくてクラスでも男女問わず人気があって、野球部でも中心的存在で…とても凄い。
「よお、山本おはよう」
「あ、山本君おっはよー」
「おはよう」
クラスのみんなが次から次へと山本くんに声を掛ける。
「山本ー昨日のテレビ見たかぁ?」
「ん?なにが?」
そして直ぐに友達に取り囲まれてしまい、私の存在は既に蚊帳の外。
そりゃぁそうだよね…。
私より、友達と話した方が楽しそうだし、私あまり上手く話せないし…。
駄目だなぁ。
山本君にも考え過ぎ良くないって言われたばっかりなのに、ついマイナス思考になってしまう。
「おはよう」
『へ?あ、ツナ君。お、おはよう』
「よぉ、根暗女。朝から暗くなってんじゃねぇぞ」
「獄寺君。そんな事言っちゃだめだよ。ごめんね」
獄寺君の代わりに何故か、誤るツナ君。でも本当の事だし…。
『いいよ。獄寺君の…いつもの朝の挨拶だし』
気にしてないよと笑えば、ツナ君はもう一度ごめんねと謝ってわらってくれた。
『獄寺君。おはよ』
メゲてはいけないと、獄寺君に言えば、「おう」ってふてくされて顔を背けた感じだったけど、片手を挙げて返してくれた。
ふふ。獄寺君実は優しいよね。
「なぁ」
『へっ?』
友達と盛り上がっていた山本君はいつの間にか一人になってた。
頬杖を付きながら、彼にしては珍しく少し不機嫌な顔。
どうしたんだろ?友達と何かあったのかな?
「ずるいのな」
『ずるい?』
山本君の言葉を繰り返すと、山本君は何故かふいっと視線を逸らす。
き、き、嫌われた!?
「…ないのな」
『へ?』
良く聞き取れない。
「だからーぁ」
何時になく苛立った感じでの大きな声。クラスのみんなが山本君を不思議そうに見る。
山本君は、慌てたように立ち上がり「悪い。なんでもないのなぁ〜っ」って笑うと、みんなも笑って何もなかったみたいになる。
「やべぇ」
罰の悪い感じに頭を掻きながらドカリと席に座って、机の上に突っ伏し体を預ける。
『あ、あのー山本君。ごめんね』
何か気に障る事をしたんだと思い、理由は分からないけど謝ったら、山本君はそのままの態勢で顔だけを私に向ける。
「悪い。それはオレの方なのな」
『でも…』
「だってさ、ツナや獄寺には…おはようって言ってんのに、オレにないし」
『え、え?そうだっけ』
「酷ぇのな、それも認識なしかぁ」
おはようって言ってなかった…かな?
でも、山本君すぐ友達に囲まれちゃってたし、私の挨拶なんて気にしてないかと。
どうしたらいいのか分からなくていると、山本君は、少し上を向いて考えた感じをした後言った。
「よし、最初からな」
『最初?』
何が最初からなのか分からない。
不思議そうにしていたら、山本君は起き上がって私と向かい合う。
「おはよう」
ニカッと笑う。
『お、おはよう』
「よし、うん。うん」
なんだか納得したみたいに、機嫌良く山本君は一人頷いた。
なんだろ…これ?
期待しちゃうよ?
期待していいのかな?
だってなんだか山本君嬉しそう…。
明日は私から挨拶してみよう。
山本君に笑顔で
おはようって。
END
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