VOC@LOID
☆空き同士―スキドウシ―
『飛べるかい?』
少女は首を横に振りました。
『飛ばないのかい?』
少女は首を横に振りました。
空の涙につられて、少女も涙を流します。透明で微やかだけれど、それは綺麗な色でした。
少女は鋏で自分の髪を乱雑に切りました。鋏でなにかを切るのは少女の癖。悩んだ時困った時、どうしようもない時の癖。
すっかり髪を短くしてしまった少女に、少年は窓の外から差し伸べていた手を胸にあてました。
『祈ればいいよ』
少女は首を横に振りました。
『僕が嫌い?』
少女は首を横に振りました。
けれど、少年がもう一度手を差し伸べても、少女はただ俯くだけ。手を取ろうとはしません。
涙が少しずつやんで、空の顔も少しずつ明るくなってきました。
『お別れだね』
少年は濡れていない両手で静かに窓をしめると、小さく呟きました。
『また明日』
そして、小さな悪魔は姿を消しました。
想いが叶ったことに喜んだ悪魔は、少女に一緒になろうよとわらい、少女の背中に小さな羽根を、頭に小さなツノをはやせようとしていました。
しかし少女は、少女にしか見えない悪魔になりたくなかったのです。
もう、パパにもママにも会えなくなってしまうから。
少女は、鋏を持ちました。
end
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