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VOC@LOID
♪東京テディベア



父さん、母さん、今までごめん。
兄さん、姉さん、それじゃまたね。


僕が、燃える。










暗くて広いだけが取り柄の部屋で、ちくちくちくちくと小さな音が響く。

何だって良いんだろ。なら僕じゃなくたって良いのさ。

B4の紙きれに書いてあったのは僕が本当じゃない証拠で、僕が今着てる服だって僕のためじゃなくて全部あの子ので、僕はあの子になれなくて、僕は、僕はー


「…愛されたいなぁ」


哀愁が頬を滑り落ちたのとセットで紛れもない本音も滑り落ちて。
あぁそうだ愛されたいんだ。
どうして?
愛されてないからさ。そうだろそうなんだよ。

欲しいんだ。その言葉が良いんだ。その言葉だけでいいんだよ。

ほら、聞かせてよ。


ちくちくちくちくと音が響く。
僕を作るんだ。代わりでいいんだ。記憶さえあればなんだっていいんだ。
ならもっと可愛く、胸だって目だって大きく、身体だって細くして。

ダメだ、こんな道具じゃ作れない。
もっと丈夫なハサミを!
もっともっと大きなミシンを!


作るんだ。

僕を。

もういいかい?

もういいよ。



きこえるよね。ほら、おはよう、僕。

………………。

…、…。

動かない?


どうして?僕なのに、どうして動かないの?
僕じゃないの?

違う…?


「違う……!」


違う!違う!違う!
こんなの僕じゃない!

こんなに目だって大きくないし身体だって細くないし可愛くないし、

どうして。
どうして駄目なの。

どうして、僕は本当じゃないのに、僕の代わりじゃ僕は駄目なの?


「…帰りたい」


たった一人の僕を受け入れてくれるあの場所に。
あの子のものばかりだけど、僕だってたくさんもらえたもの。







父さん、母さん、ごめんね。
兄さん、姉さん、また会えるよ。

僕の代わりが燃える。




(誰だって良いんだろ)

(なら、僕だって良いじゃないか)

end.



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あきゅろす。
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