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VOC@LOID
☆苦目なカラメル


息苦しくて、怖くて。



胸になにかがのしかかって、圧迫されているような錯覚にとらわれた。


「……や…」



いかないで。

いかないで。



「いやだ…!」


お願い。




わたしを、捨てないで…




苦目なカラメル





「ごめんな、ミク」



蒼い顔をして、どこまでも優しくマスターは微笑む。

どちらかというと困り顔で、わたしは理解できず首を傾げた。



「…マスター?」


「ごめんな」



同じ言葉を繰り返して、それでも赦しを求めることはしなかった。



「ミク、もう…お前は歌えないんだ」




そんな事実だけを告げて。




「…、……」



出た声は自分でさえうまく聞き取れなくて、


マスターはやはり困ったように笑うだけだった。




「どうして…?」




「ミクの声は綺麗だし、ミクはなにより歌が上手い」



そんなのは当たり前だ。


だってわたしは歌うために造られた、ボーカル・アンドロイドなのだから。



「でもな、ダメだったんだ」



だんだん、だんだんと、マスターが弱っていくのがわかった。


「お前の歌を聴いたら……みんな、ダメになるから…」


「ダメ……?」



申し訳無さそうに、またごめんと言ってマスターは目を閉じた。


たくさん歌を歌ったけれど、すぐにわからなかったのはどうして?



マスターは、動くことがなかった。




あれからどれだけ経ったかわからない。

けれど…



「この家、壊すの?」
「壊すよ」


「どうして?」
「マスターが言ったからよ」


「おねえちゃん、人がいるよ」
「人?レン、どこにいるの」
「ちがった。ボカロだよ」



そうして、わたしは…ーーー



end.

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