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彼女の秘密
(8)山本君と獄寺君
朝の日差しが窓から射し込む。


「……」


まだ重たい瞼をゆっくりと開ける。

「…!!」



目の前にはアリスが眠っていて―…。


(ってか、顔…近い…)


まだアリスは夢の中で、全く起きる気配がない。


そういえば昨日は、遅くまで部屋の片付けしてたんだっけ…なんてぼんやり考えた。

ふと隣で眠るアリスに目を向ける。


気持ちよさそうに眠ってるアリス。

規則正しい寝息が聞こえてくる。




…なんか落ち着く―…


それと同時に眠気が襲ってきた。


もう少しだけアリスの隣で寝よう―…



そして綱吉がゆっくりと目を閉じようとした瞬間、


ガチャ


「おはようございます、十代目!」

「はよーす、ツナ」


勢い良く部屋のドアが開いて、入ってきたのは他でもない。

「…隼人、山本…」

もう少し寝ようと思った矢先に起こされ、俺は機嫌が凄く悪い。

「………」



「…!十代目!誰ッスか、その女!」

「ツナの知り合いか?」


「……」

なんか説明するの面倒くさいな…

なんて考えていると、山本はアリスを見て口を開いた。

「なんか可愛いのな!」


山本はそう言うと、眠るアリスの頭を撫でる。



(……なんか苛つく)


「何やってんだ、野球バカ!そいつが敵だったらどうすんだ」


隼人は両手にダイナマイトを構える。

いや、俺の部屋で何する気…?


「隼人、その子は敵じゃないダイナマイトを出すな。それと山本…いつまで撫でてんの」


「…す、すみません!十代目…!」

「ははっ、そんなにキレんなって」

「俺、別にキレてないけど?(黒笑)」


にこにこ笑う山本に、黒い笑顔を向ける綱吉。


その2人をハラハラしながら見守る獄寺隼人。



ぱちっ、


『………』


「あ、おはよう。アリス」


そんな中、アリスが起きたようだ。


でもなんか様子がおかしい…

ゆっくりと起き上がり、無言でこちらを見つめているアリス。


「…アリス?」

『……る、さい』

「…え」

うるさいんだよ。ギャーギャー騒いで…人がせっかく気持ち良く寝てんのに


「……」

ええ…何これ。

アリス、キャラ違うだろ


「テメェ、十代目に何てこと言いやが『うるさい

「………」


隼人、お前はそこで黙るのか


『…………』

パタッ

「……え」

アリスはまた寝てしまった。


どうやら寝起きは機嫌悪いんだな…覚えておこう


「寝ちまったな。なんかおもしれーな」

「………はぁ。そういえば二人とも、今日来るの早いね」

「俺は早く十代目にお会いしたくて!」

「俺は早く起きちまったからな」


「………そう」


まったく、勝手な奴らだな


「ははっ、獄寺、お前ってやっぱ変わってんのなー」

「…なっ、テメェに言われたくねーよ」


…また始まったよ。


いいから部屋から出てってくんないかな
俺はもう少し寝たいんだよ


むくっ、

「…!」

『……ん』


山本と隼人の口喧嘩がうるさかったのか、アリスはまた目が覚めたようだ。


「「……」」


「…おはよう、アリス」


『ツナぁ、おはよう』


がばっ、


「「!!」」


「ちょっ、アリス?」

起きたアリスは、いきなり俺に抱きついてきた。

「…アリス?」

抱きついたまま動かなくなったアリスに声をかけると―…


『…くー…』

「…寝てる」

いきなり起きたり寝たりとアリスには驚かされる。

まぁ…昨日は遅かったから眠いのたろう。

もう少し寝かせてあげなきゃな。


そっとアリスを布団に寝かせようとした


…しかし


「…………」


アリスは寝たまま、俺をぎゅうっと抱きしめていて離れない。


「十代目、お手伝いします…!」

そう言い、隼人は俺からアリスを引き剥がそうとする。


それでもアリスは一向に離れない。


「獄寺ー、女子には優しくしなゃ駄目だろ?」

「うっせー、野球バカ!お前も手伝え!」

「まっ、いいんじゃねーか?」

山本お前…面倒くさいだけだろ…


「隼人…いいよ、このままで。ってか、痛い」

「すっ、すみません…!」


「そーいや、ツナ。なんか部屋すっきりしたのな!大掃除でもしたのか?」


「……」


昨日の爆発でボロボロになった俺の部屋。机やベッドの破損はかなり酷かった。

あれは最早使える状態ではなく、処分することになった。

天井や壁などの焦げ跡と穴は、なんとか誤魔化している。


そして今、部屋には隣の部屋から持ってきた布団二つしかない状態。


「…なんか焦げ臭くないっすか?」

「…気のせいだ、気にするな隼人」

「…わかりました」


やっぱり匂いまで誤魔化すのは難しいか…




『…ん、』

「あ、アリス。起きた?」

『ツナ?おはよう』

「おはよう」

まだ眠いのか目をこするアリスは、なんとも愛らしい。

そしてアリスは、じーっと見つめてくる。


「…アリス?」

『ツナが三人いるー』


「……寝ぼけてるのか」


『ツナ、分身できたんだ』

「……」

ふにゃっと笑いながら、凄いことをアリスは言う。


「ははっ、面白いのな!」

「…なんか変な女っすね」


面白そうなので、そのままアリスを見ていた。

そのうち、寝ぼけているのも治るだろうと思うし。


アリスは山本のほうに歩いていき、そして


『ツナぁ!』


そのまま山本に、ぎゅっと抱きついた。

ブチッ


俺の中で何かが切れる音がした。


「…アリス、早く離れようね?

『…!!』


なんかすごく気に入らなかったので、思いっきりいい笑顔をアリスに向けてやった。
(アリスが言う、黒い笑いだか、魔王だか言ってた笑顔を)


そしたらやっぱり、びくっとした顔でこちらを見てくるアリス。

なんか……凄く面白い

『あれ…?ツ、ナ…?』

「アリス…早く離れないと…」

『ご、ごめんなさい…!』

アリスは山本から、さっと離れると、瞳に涙を浮かべながら俺を見る。

…なんかアリスいじめるの楽しいかも。

びくびくしながら見つめる姿は可愛くて、小動物みたい。
…って、これじゃ俺、雲雀さんみたいじゃん



「まー、そんな怒んなってツナ。んーと、アリスだっけ?」

『はい…えっ、と』

「俺、山本武!よろしくな、アリス」

『はい…!』


いきなり山本に話しかけられ、アリスはおどおどしている。

その様子が可愛くて黙って見ていた。


「んで、こっちが獄寺ってんだ」

『獄寺さん…?』

「………」

睨む隼人に泣きそうになるアリス。

「………おい」

『は、はい…!』

「…お前、血出てるぞ」

『え…?あ…』

昨日の片付けのとき、切ってしまったのだろう、少し指から血が出ていた。

「…見せてみろ」

『…え、あの…、』

「動くな」

『はい…』

そう言うと隼人はポケットから絆創膏を出し、アリスの傷に貼った。

「これで大丈夫だろ」

『ありがとうございます』

「……ああ」

笑顔でお礼を言うアリスに、ぱっと視線を外す隼人。

その顔は真っ赤だ。


「獄寺、お前って絆創膏持ち歩いてんだなー」

「うっせー…」


アリスを見ると、嬉しそうに隼人を見ている。

なんだろう、凄く苛々する

「…本当ダメツナだな」

「…!リボーン」

「ちゃおっス」

「リボーンさん!おはようございます」

「おっ!小僧じゃねーか。起きんの早いのな!」



リボーンはいつ部屋に入ってきたのか、壁に寄りかかりこちらを見ていた。

(…昨日、スティックが爆発する前にさっさと逃げたくせに)


爆発した後もリボーンは帰って来なかったので、アリスと二人で片付けをするはめになった。


「なんだ、せっかく気を使ってやったのに」

「余計なお世話だよ。ってか、さりげなく俺の心読むな」


「おい、山本、獄寺」

「はい、リボーンさん」

「ん?なんだ、小僧」

「アリスはファミリーの一員だからな。仲良くしてやれよ」

「…リボーン、また勝手な事言って…」

ニッと笑うリボーン。
明らかに何か企んでいるだろう。

「おっ!いつものマフィアごっこか。よろしくな、アリス」

「リボーンさんがそう言うなら…」


『(…マフィア?)よろしくお願いします』


にっこり笑うアリスに隼人と山本は顔を赤くしていた。

「やっぱり、何か苛々する…」

「十代目!?どうかされました?」

「いや…」

「……(ツナのやつ、鈍いな)」

リボーンはその様子を見て深いため息をはく。


そしてアリスは、


『(マフィアって、食べ物か何かかな?)』


勘違いしていた。


続く…!

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