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恋に障害はつきもの
【3】授業風景
教室に着いたと、ほぼ同時に授業が始まった。

今日の一限は、苦手な数学。


「美雪ちゃん、おはよう」

『おはよう、京子ちゃん』

京子ちゃんは、私の席の隣の席で、小さな声で話し掛けてきた。


「今日は、美雪ちゃんのお兄ちゃん、居ないんだね」

『う、うん。途中で…追い払ってきた』

「そうなんだ」


毎日毎日、学校まで着いてくるので、このクラスでは、お兄ちゃんを知らない人は誰もいない。


お兄ちゃんは…私に悪い虫が付かないように…とかで毎日着いてくるのだ。

そのせいで、男子はみんな、お兄ちゃんを恐がり、私は男の友達が少ない。

でもツナ君だけは違ったんだよね…





「佐藤さん?佐藤さん!」

『へ…?』

気がつくと、数学担当の宮城先生に呼ばれていた。


「ボーッとしてないで、授業に集中してね」


『…す、すみません…』

「じゃあ、佐藤さん、問い10の問題の答えを言って下さい」

『えっと…問い10…』

…………わ、わからない…

何この記号の暗号は…解ける訳ないじゃないか…!


「佐藤さん?」


『………』

ど、どうしよう…わからないよ…


ボソッ「美雪…21…」

ツナ君…!

京子ちゃんとは反対側の隣の席はツナ君。

よく解けない問題の答えをこっそり教えてくれる。

今回みたいに。


『…21です』

「はい!正解!じゃあ、次の問題は…加藤君、解いてちょうだい」


本当に優しくて、頼りになる…私の彼氏


『(あ・り・が・と・う)』

口パクでツナ君にお礼を言うと、彼はにっこりと笑った。

か、かっこいい…!


「それ以上、美雪と見つめ合うと、カッ消すぞ…」

『…!!お兄ちゃん!』


ガゴッ…


いつの間に来たのか、お兄ちゃんは教室のドアを開けて立っていた。

…というか、教室のドアが勢いよく開けたせいか…外れている…

『お兄ちゃん!何してるの!』

「美雪は、どいていろ。今日こそ、このカスをカッ消す」


「…ザンザス…誰がカスだって?」


『…え?ツナ君?』


ツナ君はどこからか…グローブを取り出し、腕にはめる。

「…とりあえず場所を変えようか…」


え?何…しようとしてるの…二人とも…


最早、授業が出来る雰囲気ではなく、固まる先生とクラスメイト達。

一触即発な二人をただ見つめる。




「…ねぇ、僕の学校で何してるの?」


『…!雲雀さん!』


お兄ちゃんとツナ君に気をとられていて、全然気が付かなかったが、いつの間にか雲雀さんが立っていた。

「……」

雲雀さんはお兄ちゃんが外した教室のドアを見つめ、静かにトンファーを構える。


…明らかに怒っていらっしゃる…!


「美雪の兄だからって、僕の学校で好き勝手は許さないよ…咬み殺…」

『ひ、雲雀さん…!』

無茶苦茶なお兄ちゃんだけど、雲雀さんに咬み殺されるなんて見たくない…!

雲雀さんを見つめていると、彼は私の視線に気がついたようだ。


「仕方ないね…美雪の兄だから、多めに見てあげるよ。でも…学校へは立ち入り禁止にさせてもらうから」

ナイスです、雲雀さん!

そうだよ、お兄ちゃんが学校立ち入り禁止になれば、もう勝手についてこれない!…………はず…


「…チッ…これをくれてやる」

お兄ちゃんは舌打ちをし、雲雀さんに何かを渡した。
あれは…

『……写真?』


どうやら雲雀さんに渡した物は写真のようだ。
こちらからは、何の写真だかまでは見えない。


「!!…今回の事は見逃してあげるよ。じゃあね」

ざわっ…

なっ…、あ、あの雲雀さんを諦めさせちゃった…!

一体何を渡したんだろう…


「…美雪に近づくカスはカッ消す…消えろ…沢田綱吉…」

『…!』

雲雀さんが教室から出て行くと、お兄ちゃんはまたツナ君を睨み付け、戦闘体勢になる。

このままじゃ、教室が滅茶滅茶になる…!


『お兄ちゃん!いい加減にして!これ以上学校で暴れたら、お兄ちゃんとは、一生口聞かないからね!!』

「なっ…な、な、何言ってやがる…美雪…!」

美雪の言葉に、ザンザスは明らかに動揺を隠せない。

『知らない!』


「…今日のところは…これで勘弁してやる…だが、俺はまだテメェを認めてねぇからな…沢田綱吉…!」


それだけ言うとザンザスは教室から風のように去っていった。


…………


「…えっと、じゃ、じゃあ、授業を再開しましょうか…」

しばらくの沈黙の後、先生の一言で授業が再開した。




『……』

それにしても、お兄ちゃんは雲雀さんに何の写真を渡してたんだろう…


写真に写っているのが、自分であることに美雪は全く気が付かなかった。

一方のツナは…

「…(あの写真、絶対に雲雀さんから奪ってやる)」

打倒、雲雀さん…!と燃えていた。

続く…!

次回、雲雀VS綱吉…!

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あきゅろす。
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