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笑って…僕の姫君
act.6 居場所

洋風な長い廊下を手を引かれて歩いて行くと、奥には他と異なる雰囲気のドアがあった。


それは洋風な感じではなく、落ち着いた和風な感じである。


そして何故かここだけ、引き戸―…?


「椿、ここが僕の…いや、僕らの部屋だよ」

引き戸を開く彼は、私の手を優しく引き、中へ案内する。


『……』


先程までの廊下とがらっと変わり、和で統一されている。


「椿、靴はそこで脱いでね。乾かしておくから」


『はい…、すみませ…んっ!』


チュッ…


『…!!』


謝ると同時に唇を塞がれていた。

いきなりの出来事に一瞬何が起きたのかわからなかった。



ようやく唇を離した彼は、真っ直ぐ椿を見つめる。


『きょう、や…?』


「違うよ…椿、聞きたいのはそれじゃない」

『え…?』


恭弥を見ると拗ねたように私を見ている。


『えっと…あの、…っ…ありがとうございます…』


「敬語もいらないけど…まぁ、今回は許してあげる」

『…!』


どこまでも優しい眼差しに魅入っていると、恭弥に抱きしめられる。

温かい…それに…、

抱きしめ合い密着しているため、恭弥の鼓動が直に伝わってくる。


それが凄く私を落ち着かせてくれる。


『……恭弥』






「…身体、冷えちゃったね。お風呂沸かしてくるから待ってて」

『はい…』


しばらく無言で抱きしめて合っていると、その沈黙を破ったのは恭弥だった。


お風呂を湧かしてくると言い、そっと離れる恭弥。


(…っ、離れたくない…!)


「椿…?」


私は彼の服を無意識にぎゅっと握っていた。


恭弥は不思議そうに私を見る。


『…あ、えっと…』

彼にじっと見つめられ、何て言ったらよいのか分からずに言葉を詰まらせる。


「…どこにも行かないよ」

『…!』


「椿を一人になんかしない。言ったでしょ、ずっと側にいるって」


…どうしてだろう…、彼は私が欲しい言葉をくれる


「君の居場所は僕(ここ)だよ椿」


『…!あ、りがとう…っ』

私はいつの間にか泣いていて…、恭弥は優しくその涙を拭いてくれた。



今まで居場所なんてなかった。

   ・・ 
貴方は彼らとは違う…。


恭弥、貴方なら信じられるかもしれない


続く…!

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