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極上ロイヤルティー
04


「女王が正気を失い狂っていることも、城付きの魔術士達が計画を始動させたことも、国王が女王に代わり国を動かしていることも――」


 リルはザラギスの胸に額をつける。甘えたような仕草の主人にザラギスは暫し戸惑った。しかし、もう明日には全てが終わる。どんな結果に転んだとしても、肩に色んな重荷を乗せた少女も解放される。


 きっとそのことでマスターも感慨深くなっているのかもしれない、とザラギスはリルの髪を鋤いた。出会った頃は長く腰まで届いていた髪は邪魔だから、といつの間にか肩ほどにまで短くなってしまった。


 思えば出会った頃からこの少女は滅多に感情を表に出さなかった。いつも静かにその大きな瞳で物事を推し量っている。笑うこともほとんどない。彼女は『国民を救わねばならない』という使命のもとに生きている。その国民はリルが自分たちを救うために命を掛けているだなんて露ほども知らない。なのに、リルはたった1人で国家最強の権力に立ち向かっているのだ。


「マスター、何故そんなに頑張る?」


 ザラギスが出会った時から何度も尋ねてきた同じ台詞。同じ答えが返ってくると分かっていても聞かずにはいられなかった。


 リルは顔を上げた。その目には一点の曇りもない。いつもと同じ澄んだ瞳。


「誰かに感謝されようとか認められようとかそんな風には思わないけど、一度でも私の誕生を喜んでくれた国の人のために私は礼がしたい。だって私は生まれてはいけなかったんだもの」



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あきゅろす。
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