本の間に 信じたい心 「お前を信用してもいいのだろうか。」 「…え?」 突然きこえた声に俺は振り向いた。 そこには腕をくんだガーリッドが。 セレスティア城を取り戻そうという前日、不安と緊張で眠れなかった。 そんな俺にガーリッドが、まるで自分に言い聞かせるように言った。 「私は城を帝国から取り戻さないと行けない。でも、お前は帝国の皇子だ。」 「ガーリッド?」 名前を呼んでみても、ガーリッドは続ける。 「確かにお前は帝国を裏切ってファラ様や陛下、バーム様を救ってくれた。だが、私がお前を信用してもいいのだろうか。」 ズキンッ 胸の奥が痛んだ。 俺はまだガーリッドに信用されてないんだ。 そう思うとつらい。 「ファラ様をお守りするためには、常に最悪の事態を考えてなくてはいけない。今決めておかないと、向ける刃もにぶる。」 「ガーリッドはどう思うんだ?」 思わず問掛けていた。 「ファラの側近としてではなく、ガーリッドとしては俺をどう思うんだ?」 「私は…………。」 ガーリッドは一旦言葉を切った。 そして考えながら、 「お前を信じたい。」 と言った。 フッと痛みが消える。 「ならそれでいいじゃないか。」 「でも――――」 「君は俺を信じたいと思ってくれている。俺はファラや陛下を裏切らない。もちろんガーリッドのことも。」 「……そうだな。では今は信じよう。お前とともに城を取り戻す。」 ガーリッドが少し嬉しそうに言う。 「何か嬉しそうだな。」 「ディランを疑うのはつらかったからな……。」 憑き物がとれたかのような笑顔で言うガーリッド。 「……信じてくれてありがとう。」 「いや、疑って悪かった。明日は絶対、城を取り戻そう。」 「ああ。おやすみ。」 俺は誓うよ。 もう誰も裏切らない。 君の期待も……。 [*前へ] |