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fiction
世界滅亡
物が少ない部屋は
音がよく響く。


「ぅ…!」
肩を力一杯噛まれた私が、熱いような痛みに
小さくうめくと
キンキンと糸を弾くような空気の揺れを感じた。


床に置かれたテレビの灯りだけがその部屋を暗闇から守っていた。
砂嵐が世界の終わりを演出しているようでおかしい。

肩に噛みついているのは
名前も知らない男。
たった今
噛む力を一層強めて
この先名前がつくことは愚か、命にすらならないアレをあたしの中に吐き出した。





肩が焼けている。
痛みのあまり涙が出て、
少し頭にきて、
「この変態!
馬鹿!痛かったんだけど!」
繋ったまま、男の腹の下で子供みたいに叫んだ。

男はあたしを抱いて謝る。
「ごめんね。
痛かったよね。
ありがとう。
ごめんね。」
ゆっくりと、一言一言。
まるで薬を塗るような、
染みこませるような、
そんな話し方だった。


あたしは
そのまま抱かれたまま泣いた。
グラグラと崩れる何かの隙間に
暖かくて柔らかいものが流れていく感覚。




私が泣やみ、落ち着いた後で
男が体を離そうとしたら
ねだろう。
「あと三分でいいから、だっこ。」

テレビのチャンネルを変えようとしたら
とめよう。
「まだ世界を滅亡させておきたいの。」





その前に
名前をきかなくちゃ。



END...or is it?

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あきゅろす。
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