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fiction
destruction
私はよくモノを壊してしまいます。
大事にしていてもいつのまにか壊れてしまいます。

最初に壊れてしまったのは
父と母でした。
私が保育園に通っている頃、
車で事故にまきこまれて
いなくなってしまいました。

「物を大事にしなさい。」
新しい母親によく言われたものです。
私はいつだって大事にしていたのに。
新しい母はこうも言いました。
「お前は物もちが悪いねぇ。」
致し方ないのです。
田舎のおばぁちゃんがくれた櫛だって
一ヶ月もたたない内に割ってしまったし、
お気に入りの人形だって、気が付いたらもう首がどこかへ行っていました。
そんなことが続いたら
新しい母だって言いたくもなります。

でも私は
いつだって大事にしてた。

キャロの時もそうです。
キャロというのは私の13歳の誕生日から我が家にやってきたシーズー。
飛び出しそうな丸い目と
少し臆病な所がかわいくて
妹ができたみたいでした。

だけど、一年たった頃
キャロも壊れてしまいました。
散歩中に私の手からリードが離れ、走り出したキャロ。
忘れもしない真っ黒い車。
キャロは、はねられてしまいました。

私の大事なものは
私の意思に関係なく、私の目の前で壊れてしまうのです。

恋人だってそうです。
三ヶ月前、初めての彼氏ができました。
私は彼が大好きで、
彼もさえない私を好いてくれてとても幸せでした。

けれどある時。
仕事帰りに歩いていて
彼と、お腹の大きい女の人を見てしまったのです。
まさか、と思い
ついに昨日彼に問い詰めました。
女の人はやはり彼の奥さんだということでした。

すると彼は私を抱き締めて
「いつか全て捨てて君と。」
と言ってくれました。
私は本当に嬉しかったので彼を信じようと思いました。

だけど、
彼が帰る時間になったら
心臓のあたりが痛くなりました。
喉が乾いて、目の前がチカチカしました。
私は悲しくて悲しくてたまらなくなりました。
そして、
気が付くと彼が血を流して床に倒れていたのです。
広がる血の中には灰皿がおちていました。

何が起きたのかわかりませんでした。
両親が死んでから、私の大事なものが壊れる直前は不思議と私は悲しくなって前後不覚になってしまうのです。


今日は気が付くと
私の手首からたくさん血が出ていました。
体がふわふわしてきます。

私はよくモノを壊してしまいます。
私はとうとう私まで壊してしまったのです。


END

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あきゅろす。
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