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初めて呼んだ、君の名は †財前切夢
attention!

・社会人設定
・付き合ってるのに何故かお互い名字呼び
・電話という設定故、会話文ばっか

以上がOKな方は下へお進み下さい















私には大好きな人がいた。



でも、残念ながら、傍にいるわけじゃなくて。



東京と大阪で遠距離恋愛をしていた。



お互いの仕事の関係上、週に1度しか連絡は取れなったけど。



それでも、確かに幸せだった。






その日も、なんてことない日だった。

いつものように友達と遊んで。

夜、大好きな人との電話に胸を弾ませていた。

週に1度の電話だから、まずはこの話をして。

その話が終わったら次にこれを話して。

そんな、プランじみたものまで考えていた。

そろそろ電話をかけようと手始めにメールを送る。

いきなり電話をかけたんじゃ、もしかしたら入浴中とかで出られないかもしれないから。

これが、私たちの中でのルール。

その日は珍しく早めにメールが返ってきた。

「〈電話大丈夫やで。ちょうど話したいことあってん〉」

その文面に、どこか違和感を感じた。

別れ話でもされるような、そんな予感がした。

昔に見た、夢の内容がフラッシュバックする。





顔に靄(もや)が掛かっていて、誰か判別することは不可能だったけど、私とその人は抱きしめあっていて。

普通、抱きしめあっているというのは凄く幸せなことで。

でも、その夢の中では全然幸せじゃなかった。

その瞬間、確かに2人で体温を分け合っているというのに、涙が出そうなくらい悲しかった。

まあ、夢の中の私は号泣していたのだが。

胸が締め付けられるように苦しくて、呼吸すら上手くできなかった。

私が好きだと呟くと、相手も同じ言葉を返してくれて。

どうして慕いあっているのに、離れなければならないんだろう・・・






そんな夢を思い出したが、自分の気のせいだと軽く頭を振り、電話をかけた。

独特のコール音の後、財前の声が聞こえた。

「もしもし」

『もしもし?久しぶり』

「おん。久しぶり」

『話したいことって何?』

「あんな、前も話してたことやけど、転勤決まってん」

『ああ。行くかまだ分からないって言ってたのに…行くことにしたの?』

財前の言うとおり、転勤の話は前から聞いていたから対して驚きはしなかった。

次の言葉を言われるまでは。

「おん。んでな、色々考えたんやけど…俺たち、別れへん」

『………えっ?』

「やって自分、俺のとこに来る気あんまないやろ?」

『…結婚してとかならともかく、付き合ってるだけで、ってのは……正直、ないかな?』

これは、私の正直な気持ちであり、お互い、電話で何度も話してたこと。

だから、そんなに重要視はしていなかった。

「転勤したら、仕事内容もガラッと変わってまうし、これからどうなるかよう分からへんねん。せやから、俺んとこ来いっても言えへんし、信じて待ってろなんて無責任なことも言えん。やから、別れよう」

涙が溢れた。

どうして、勝手に決めちゃうの?

『なんで?やだ……別れたくないよ』

「すまんな」

『やだ…なんで?私のこと嫌いになった?』

「ちゃうて。嫌いならもっと早うに別れとったわ」

『じゃあ、どうして?』

「名字の優しさに甘えたらアカン思てんねん。明日どうなるかも分からへん身や。週1で取ってた連絡だって、今まで以上に取れんようなるし……」

『それでもいいって言っても?』

「名字がよくても、俺が嫌なんやて。自分に寂しい思いさせたないし、これ以上泣かせたくもないねんて」

『泣かせてなんかない………私が勝手に泣いてるんだよ』

「そう言うてくれると嬉しいんやけどな…でも、ダメやねんて……このまま付き合いが長なったとしたら、取り返しのつかないことになるかもしれん。…もう1年半くらい経ってもうたけど、引き返すなら今やろなーって」

『なんで、そういうこと言うの?』

「な?ひどいやつやろ?」

それは暗に、だから早く嫌いになってくれと言っているのだろうか。

私が何を言っても全く聞く耳持たずな財前。

それじゃ、答えはハイorイエス…選択肢なんて、ないじゃないか。

本当、一度言い出したら私が何言っても聞かないんだから………

付き合い始めから、何も変わらない。

もう、絶対に考え直してくれないんだね………

「せやから、別れてくれへん?」

もちろん別れたくなんてない。

でも、もう何を言ってもダメなことはよく分かって。

認めざるを、得なかった。

『私は、“うん”って言わなきゃいけないんでしょう?そうじゃないと、財前が困るんでしょう?』

「ひどいこと言うてるよな(苦笑)」

『本当だよ……んじゃ、最後のワガママ、聞いてくれる?』

「なんや?」

『名前、呼んで?・・・お互い、呼び合ったことあんまなかったから』

「せやったな。まあ、名字のが言い慣れてるっちゅーんが大きいけど。…名前、…………名前」

『…こんなことなら、恥ずかしがらずに、もっと呼んでおけば良かった、な』

後悔してももう遅いというのに、そのことばかりが頭をよぎり、涙が溢れる。

『そろそろ、電話切ろうか?……財前は優しいから泣いてる私に電話切ろうなんて言い出せないだろうし?』

「優しくなんてないわ」

『嘘、だったら、言いたいことだけ言って一方的に電話切れば良かったじゃない』

「もしそうやったら、ほんまに最悪な奴やん」

『だから、優しいって言ってんの………変に優しくするなよ、バカ』

「すまん」

『……泣いてばっかでごめんね?』

「ええって、俺が泣かせたんやし」

『最初は泣くの我慢しようと思ったんだけど、途中から無理だったんだよね』

「おん。…まあ、最初から気付いててんけどな」

『………頑張って隠してたつもりなんだから、言うなよ、バカ』

「ハハッ、すまん。………なあ、今までいっぱい泣かせてしもて勘忍な?」

『違うよ・・・さっきも言ったけど、泣かせたんじゃないの。私が勝手に泣いたの』

「ホンマにすまんな・・・でも、泣かせるの、俺ももう耐えられへんくて」

『そっちの勝手じゃん』

「おん、俺のワガママや」

『………長々ごめん、今度こそ電話切るから』

「おん」

『バイバイ』

「バイバイ」

その言葉を聞いて、携帯に耳をあてたまま、手探りで電源ボタンを探す。

そのまま押さなくちゃいけないのに、押せなかった。

私に、押せる訳がない。

押したら、終わってしまうから。

『………切ってよ。切りにくいじゃん』

「…なんなら今日ずっと繋いでてもええんやで?」

『だから、変に優しくすんなっつーの!』

空笑いした後、大きく深呼吸をした。

『今度こそ、切ります。でも、最後に名前呼ばせてね?………頑張るから』

「おん」

変に敬語になったのは、彼女じゃなくなることに決意ができたから。

『………バイバイ、光』

「バイバイやな、名前」

『じゃあ』

そこまで言うと、電話を切った。

さっきの件で、私が電話を切らない限り、終われないと分かったから。

プツリ。

切った瞬間、すごくすごく大好きだった財前と他人になったことを痛感して、また泣いた。

あいつの名前を呼ぶのは、これが最初で最後だった。











(恥ずかしくて呼べないと思っていたのに、口にすると随分あっけなくて)





END










†あとがき†

諒の実体験だから、ノンフィクションですよー(笑)
これを読めば、別れに至った全貌がモロバレするとゆー諸刃の剣な夢。
でも、すごくいいネタになりました。
こちそうさまでしたモグモグ。
なにに苦労したかってゆーと、財前の関西弁に直すことだよね(´ω`)
北国育ちにゃー、関西弁なんて未知の領域っすわ。
とんだ似非関西弁を失礼☆


ちなみに、お相手を財前に選んだ理由は……
下の名前が一緒だったからです(漢字は違うけど)
あと、夢に見たってのも実話。
最近、予知夢見るようになったんだよねぇ…
その時になって「あぁー、夢で見たけどこれかぁー」みたいな。

では、ここまでお読み頂きまことにありがとうございました!

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