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俺と不良(ヤンキー)



ヤンキーに連行されて、俺達は表通りからだんだん人気のなくなった路地に入っていく
雪を踏む四足の足音しかしない
その静けさが嫌に心を掻き乱す
時間が経つにつれ、動揺はなくなった
余裕ができた俺は考え込んでいた


この状況をどう切り抜けよう


俺はケンカをしたことがない
だが武道はやっているのだ

実を言うと家が空手道場をやっている
ただの道場ではなく、通っている生徒がほとんど警官なのだ
理由は警官を引退した道場の師範である祖父と現役の父を慕ってい入った警官が多いから。二人は憧れなのだそう
そして俺は五歳から二人にしごかれている
受験を控える今でもだ

(文武両道。受験を言い訳にするなっ!!)と祖父に叱咤された
落ちたらどうする、と腹を立てていたが今ではやっててよかったと感謝してる
くそじじい


しかし問題はこいつの実力だな


後ろから観察してみるが、服で体付きは分からない。だが、隙の無さ、歩き方、呼吸

俺の目が節穴じゃなかったら、こいつは数々の修羅場を乗り越えてきたんだろう
相当な実力を持っている

いや、安心しろ俺
数々の鬼達の試練に耐えてきたじゃないか
鬼(ヤツら)に比べればコイツは近所でチビッコに恐れられてる番犬・ジャックじゃないか

勝てなくても負けはないだろ、うん


ザッと雪を擦る音をヤンキーの片足がたてる
ヤンキーの背中を見ていた俺は立ち止まったヤンキーに合わせて自分も歩みを止める

着いたはいいが先は行き止まりになっている
このシチュエーション、漫画やテレビでよくある
俺はおそらくサンドバックにされるのだろう

ヤンキーがくるっと華麗に廻る
黒のロングコートに黒のマフラーを着たイケメンに背景は降雪
これが画面の向こうの世界だったらよかったのだが
今の状況でその美しさにはドキッではなくゾクッとした寒気しかしない


「俺さあ、最近つまんねーんだよ」
ヤンキーは言葉通り、つまらなさそうな顔をして言った
目はこちらを見ていなく、何もない壁のほうを見ている
「強い奴がいねーんだよ。俺を奮い立たせてくれるぐれーの強い奴が。


チームの奴らといる時は楽しいんだが、喧嘩になると相手が虫みてえに弱くて、すぐ勝っちまう


昔みてえな感覚を感じてえんだよ」

突然語りだしたヤンキー
要約すると、≪自分強すぎてやんなっちゃうわー。誰か強い奴いねーかなー?≫か
じゃあウチに来い。AからSSランクの魔物達にレベルがカンストしたじじいがいるから。絶対満足するよ。満足しすぎて絶叫するよ

「なかなか強者がでてこなくてイライラしてんだよ。

アンタは見た感じ馬鹿じゃなさそうだからこれから俺がやることは分かってんだろ?

サンドバックなんてもんは格好悪ぃの本当は趣味じゃねえんだが、悟ってくれ
見かけ以上に超ー腹立ってんの、俺。喧嘩してもつまんねーわ、気に入ってたカラコンを中途半端に片方割られるわ。すげー散、々っ!」

うん、気に入ってたんだな。しかも機嫌が悪いときに。気持ちがすごく分かる。土下座しても物足りないくらいに罪悪感を感じる
腹を決めよう、俺。その拳を受け止めようじゃないか

「アンタには悪いが、『なんでも』するっつったから、それ使わせてもらうわっ!」


俺は目を閉じる。くるべき痛みを少しでも緩和させるために腹に力を入れる


――――が、


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