俺と不良(ヤンキー)
どうやらやっちまったようだ
そいつ(・・・)が黒と紅の鋭い目で俺を捕らえ、ギロリッと睨み付ける
右目の紅眼と濡れ鴉色の黒髪、漫画にでてくるような悪魔のような風貌はそいつの整った顔をより一層引き立て現実味を感じさせない
しかしここで特筆すべきなのはやつが纏ってるオーラだ
俺は一般家庭とはちょっと違う環境で十五年間育ってきた。だから本能的に察知してしまった
コイツヤバい、と
動物の本能からなのか、勝手に足が一歩後ろに下がる
すると左足から「グシャッ」という何かが潰れた音が
そいつを警戒しながら足を退けると、雪の上に紅いものが砕けている
それを俺は見たことがある
妹の仲の良いクラスメイトとして我が家にギャルが来た時に見たのだ
目から外しているのを
考えてみればカラコンをわざわざ片目だけに付けるなんてことは稀だろう
オッド・アイが似合いすぎて気付かなかったんだ
おそらくぶつかった時に運悪く落としたんだろう
心の内で重い溜め息を吐く
カラコンっていくらするんだろう
男子中学生の所持金で払える額であればいいな
んな訳ないか
ちらっとヤンキーの様子を窺う
下を向いていて表情が判断できない
しかしヤンキーはまだじっと、砕けたカラコンを見ていた
なかなか顔を上げないヤンキーに、焦りを抱く俺
気に入ってたのだろうか、それならますますこちらが居たたまれない
怒ってる人間(ヤンキー)に謝っても許されないだろうが、非があるのは明らかに俺だ
悪魔(ヤンキー)に負けるな、俺
「あの、踏んでしまってすみません。
俺弁償でもなんでもしますので…」
頭を九十度に近い角度で下げる
するとヤンキーが機嫌のいい声音で俺にたずねた
「『なんでも』、ねえ…
その言葉に嘘はねえんだな? 」
ヤンキーが見つめているだろう俺の背中が悪寒に走る
おそるおそる頭を上げると、ヤンキーが凶悪な笑みを・・・、いや正しく言うと凶悪な顔に笑みを貼り付けてるような顔をしていた
しまった
言質をとられた
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