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01紅茶

 少しくらい構って、なんて  迷惑、かな



 トントン

 仕事の資料を片手にパソコンを見ていたナルは、部屋に響き渡った音に顔をあげた。


 …のだと思う、多分。いや、見てたわけじゃないから分からないんだけど。
 薄く開けたドアから中を覗くと、顔をあげたナルと目があった。


「……何だ、莉奈。用があるなら入れ」
「んーと、用って程じゃないんだけど……」


 紅茶、淹れてきたの。

 ポツリ。呟くように言った私は、そのままドアを開けて中に入った。


「飲む?」
「……」


 部屋のドアを閉めると、いつものように騒いでいる霊能者サマたちの声が小さくなって、まるでここだけ世界から切り離されたような感覚に一瞬陥った。部屋には、資料に目を戻したナルが紙をめくる音だけが響く。
 …ナルの無言を肯定ととった私は、ナルの横に紅茶を置く。っていうか、一言くらいくれてもいいものではなかろうか。ありがとう、とかさ。あぁ、とか。莉奈、ありがとう、と笑顔を見せてくれるとか最高ではないか。


「……」
「……」


 訂正しよう。想像してみたらかなり怖かった。
ナルはナルだからいいんだよね、うん。


「でも、可愛い彼女が態々紅茶持ってきてあげたのに、無視か……」


 ちぇーと口を尖らせながら、部屋にあるふかふかソファに体を沈める。あー、相変わらずふかふかー。なんだか眠くなってきたよ。
 クルン、と仰向けに体の向きを変えながら襲ってくる眠気に目を閉じてウトウトと身を委ねていれば、乾いた音を耳が拾い閉じた目で顔にかかる影を感じた。


「……っ」
「……あんまり無防備なのもどうかと思うがな、莉奈」


 ちゅ、と軽いリップ音を立てて離れた温かいものに驚き目を開くと、逆さまでしてやったり顔のナルが視界いっぱいに広がった。


「……ズルイ」
「なにがだ?」
「行き成りは、反則」
「無防備なのが悪いんだろうが」


 とか言いつつ、すでに私から離れていくナルを上半身を起こした状態で恨めしく見つめてやれば、苦笑が返ってきた。


「……なら、許可を取ればいいのか?」
「……や、そういう訳じゃないけど、」
「ならいいだろう」


 結論。私はナルに口で勝てない。
 言い返す気もなくした私がソファに顔を埋めているのを、ナルが湯気が立っている紅茶を片手に楽しそうに見ていたなんて知る由もない。







ナルは確信犯だと思う。

そして、相当のS

咲月     




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あきゅろす。
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